SK Telecomは、端末を自ら用意して通信サービスだけを選ぶ利用者層の開拓に乗り出している。2025年10月に投入したブランド「air」では、契約手続きから開通、ポイント特典、顧客サポートまでをアプリに集約。低価格の5Gプランと短時間で完了するセルフ開通を打ち出し、従来は「安いが手間がかかる」とみられがちだった市場の取り込みを狙う。
端末を自分で購入し、通信サービスを別に契約する利用形態は、契約期間の縛りがない半面、特典が限られ、手続きも利用者自身が進める場面が多い。このため、価格面のメリットはあっても利便性に欠けるというイメージがつきまとっていた。
SK Telecomはこの課題に着目し、「air」を立ち上げた。開通から特典、サポートまでを1つのアプリで完結できるのが特徴で、ブランド名には、必要なサービスと特典だけを絞り込み、空気のように軽い通信体験を提供するという意味を込めたという。
air事業チーム長のチョン・ジュニョン氏はこのほどDigitalTodayの取材に対し、「端末と通信サービスを分けて選ぶことに慣れた顧客は確実に存在する」と述べ、「airがその有力な選択肢として定着していく」との見方を示した。
サービスの軸に据えるのは、「通信ミニマリズム」だ。データ中心のシンプルな料金体系、使い勝手を意識したポイント制度、セルフ開通、24時間365日のサポート、必要最小限の付加サービスに絞り込んだ。契約、開通、解約、利用照会、特典利用までをアプリ上で完結できる点を差別化要因とする。
5G料金プランは6種類に絞った。月額2万9000ウォンの7GBプランから、月額5万8000ウォンの無制限プランまでをそろえる。必要なデータ容量、音声通話、SMSは確保しつつ、不要な付加特典を省くことで月額料金を抑えた。全プランでQoS付きの速度制限オプションを用意し、基本データを使い切った後も、所定の速度で追加料金なしに利用できる。
ポイント還元もairの柱の1つだ。既存の通信会社メンバーシップは適用されないが、アプリ内の「歩数計」や「今日のピック」といったミッションをこなすことでポイントをためられる。たまったポイントは毎月の通信料金の割引に充てられるほか、ポイントショップで商品券にも交換できるとしており、従来の端末持ち込み利用では得にくかった特典を訴求する。
新規加入時にはボーナスポイントも付与する。SK Telecomは、月額5万8000ウォンのプランでも、1年間は実質的な負担を2万ウォン台半ばまで抑えられる効果があるとしている。
チョン氏は「日常の中で実感できる特典が必要だと判断した」と説明した。今後は、アプリ内での商品購入やコンテンツ利用、広告利用などでもポイントを獲得できる仕組みを検討しているという。
チョン氏は「最終的には、通信アプリを使うプロセスそのものが料金割引につながることが、最も直感的で大きな特典になる」とも語り、ポイント設計もその方向で拡張していく考えを示した。
開通手続きの簡素化も進めた。アプリ上では約90秒で開通を完了できるという。迅速な開通に向けてeSIMに対応したほか、当日受け取りが可能なUSIM配送、ハッピーコールなしの自動USIM開通にも対応する。週末や夜間など、その場での開通が難しい場合には、予約加入によって開通可能日の午前9時に自動で開通する仕組みも用意した。
問い合わせ対応については、アプリ内の顧客センターを24時間365日運営する。専門相談員によるリアルタイムのチャット相談を提供しており、今後はAIベースのチャットボットも導入する計画だ。
一方で、airの展開を巡っては、MVNO業界への影響を懸念する声もある。資金力で見劣りするMVNO各社にとって、契約期間の縛りがなく、オンライン加入を前提とした市場で、SK Telecomのように大規模な特典を打ち出す事業者と競うのは容易ではないとの指摘だ。
これに対し、チョン氏は「MVNO市場と競争したり、侵食したりする意図は全くない」と否定した。その上で、「各事業者がそれぞれ異なる形で顧客価値を提案していく過程だとみている」と説明。契約期間の縛りがないことは特定事業者だけの領域ではなく、消費者の選択肢を広げる意味があると述べた。
また、中高年層にとってはアプリ中心の加入手続きが参入障壁になり得るとの見方もある。チョン氏は、こうした課題を認識しているとした上で、手続きをより簡単にする方向で改善を検討すると説明した。一方で、不正開通を防ぐため、セキュリティと信頼性を前提とした基本構造は維持する考えも示した。相談チャネルの強化に加え、Webサイトの構築案も検討しているという。
セキュリティ対策については、サービス公開前にホワイトハッカーと連携し、ソースコードの脆弱性点検と改善を終えたとしている。今後も継続的なサービス更新を通じて不正開通の事例に対応し、セキュリティを強化していく方針だ。
チョン氏は「基本はシンプルに保ちながら、顧客の実際の需要には素早く対応していく」と強調した。その上で、「顧客の声を迅速に反映し、サービスが進化していると実感できる体験を提供することが目標だ」と述べた。