米国の電気自動車(EV)市場が2025年10〜12月期に急減速した。連邦政府のEV税額控除(7500ドル、約112万5000円)が7〜9月期末で終了し、需要の先食いが起きたためだ。ただ、逆風下でも一部の高級EVは販売を伸ばした。
EV専門メディアのInsideEVが1月15日付で伝えたCox Automotiveの集計によると、2025年の米国EV販売は約127万台だった。2024年の約130万台から2%減ったものの、過去2番目の高水準となった。
もっとも、通年の数字だけでは年末の急変は見えにくい。税額控除終了後の10〜12月期のEV販売は23万4000台にとどまり、前四半期比46%減、前年同期比36%減となった。多くのEVが苦戦する中でも、一部のブランドや車種は販売を伸ばした。
PorscheのTaycanは10〜12月期に1672台を販売し、前年同期比23.6%増だった。TeslaのModel Yも9万2460台で同8.1%増。CadillacのEscalade IQは2085台と同211.2%増を記録した。
Cox Automotiveで産業インサイトを統括するステファニー・バルデス=ストリティ氏は、高級EVの購入層は7500ドルの税額控除への依存度が相対的に低いと指摘する。EV市場全体が落ち込む中でも、高級セグメントは成長を維持したとの見方だ。
増加の背景は車種ごとに異なる。CadillacのEscalade IQは2024年末に生産が拡大し、2025年末にかけて販売が本格化したことが追い風となった。一方、PorscheのTaycanは充電速度やバッテリー性能の改善で商品力を高め、需要を取り込んだ。
TeslaのModel Yは一部改良でデザインとサスペンションに手を入れたほか、年末まで0%ローンを打ち出して需要を下支えした。Teslaは現在も一部トリムで無金利ローンを続けており、購入負担を抑える戦略を維持している。
特徴的なのは、Teslaを除くと10〜12月期に販売を伸ばしたEVの多くが高級モデルだった点だ。これらの車種はベース価格が8万ドル(約1200万円)を超え、もともと連邦税額控除の対象外だったため、制度変更の影響は比較的小さかった。
市場では、こうした動きをEV市場の構造変化とみる向きもある。EVが内燃機関車との価格差を縮め、技術面での商品力を確保できれば、インセンティブがなくても成長できるという見方だ。
2026年には30車種を超える新型EVが米国市場に投入される予定で、このうち相当数は中低価格帯を狙う。日産のLeaf、ChevroletのBolt、RivianのR2などが代表例で、RivianのR2はTesla Model Yの直接競合として注目されている。
バルデス=ストリティ氏は、データを見る限り、ブランド力のあるメーカーの新型EVは政策変更下でも成長し得ると分析する。ただ、その動きがまず表れるのはプレミアム市場だとも指摘した。あわせて、自動車業界のセオリーとして、新型車は伸び、旧型車は落ち込むと付け加えた。