世界的な電動化の進展と産業インフラ需要の拡大を背景に、銅の供給不足懸念が強まっている。EVや送電網の更新、再生可能エネルギー設備、データセンター整備で需要が膨らむ一方、供給の伸びは限られ、今後数年で数百万トン規模の不足が生じる可能性がある。
TechRadarが14日付で報じたところによると、S&P Globalの分析では、2040年の世界の銅需要が約4200万トンに達し、現在比で約50%増えるとの見通しを示した。
これに対し、銅の生産量は2030年ごろに約3300万トンでピークを迎え、その後は伸び悩むと予測されている。2040年時点では約1000万トンの供給不足に陥る可能性があるという。
供給制約の背景には、鉱石品位の低下や採掘コストの上昇、採掘環境の複雑化がある。新規鉱山の稼働開始までには平均17年を要し、気候変動や水不足リスク、環境規制に加え、巨額投資を要する産業構造も増産の足かせになると分析した。
リサイクル銅の供給も、2040年時点で総供給の約3分の1にとどまる見通しで、不足を補うには限界があるとみられている。
また、中国が世界の銅の製錬・精錬能力の40〜50%を占めている点もリスク要因として挙げた。送電網やデータセンター、GPUなど、電力需要の大きい分野は銅への依存度が高く、地政学リスクやサプライチェーン寸断の影響を受けやすいとしている。
S&P Globalは、特定国への依存を下げるため、既存の集積地以外でも製錬能力を増強する必要があると強調した。
一方、技術分野で代替策として挙がる光技術やシリコンフォトニクスについても、当面は広く普及しにくいとの見方を示した。GPUやサーバ、送電網設備の中核部材は引き続き銅に依存しており、高水準の需要が続く公算が大きい。
専門家は、許認可の迅速化や投資拡大、多国間協力が進まなければ、銅の供給制約が長期化する恐れがあると警告している。
PwCも、気候変動が銅鉱山の操業に直接影響しかねないと指摘した。銅採掘には安定した水供給が欠かせないが、多くの鉱山は干ばつリスクの高い地域に立地しており、環境ストレスが生産制約につながる可能性があるという。
通信分野で光ファイバーへの移行が進み、一部で銅の回収が進んでも、全体需要に与える影響は限定的との分析も示された。
銅不足は、単に鉱山開発を増やせば解決する問題ではない。環境規制や地理的集中、投資不足など複数の要因が重なっており、専門家は長期投資の拡大、許認可手続きの迅速化、多国間協力を通じて、世界の銅サプライチェーンの安定性を高める必要があると提言している。