韓国政府が、科学技術とAIを軸とする政策推進の過程を国民に公開した。科学技術情報通信部は1月12〜14日の3日間、宇宙航空庁や郵政事業本部など計55機関の業務報告を実施し、同部のYouTubeチャンネルとKTVを通じて生中継した。
今回の業務報告は、ペ・ギョンフン副首相兼科学技術情報通信部長官の主宰で行われた。所管の公共機関や関連機関が参加し、配信中に寄せられたオンライン意見も議題に取り上げ、関係機関がその場で回答するなど、双方向の意思疎通を強化した。
◆NST、6月に「国家科学AI研究所」開所へ
12日は、国家科学技術研究会(NST)をはじめ、科学技術分野の政府出捐研究機関や公共機関など計28機関が業務計画を報告した。AI大転換と研究課題中心運営制度(PBS)の見直し方針に合わせ、AI基盤の科学技術革新、機関ごとの固有任務の再設定、産学研の連携強化を重点課題として打ち出した。
NSTは「国家科学AI研究所」の設立に着手する。1月に準備作業を始め、拠点整備やAIインフラ、運営体制の構築を進めた上で、6月の開所を目指す。政府出捐研究機関を中心に、AI基盤の科学技術革新を支えるハブとして位置付ける。
国家科学AI研究所の2026年予算は約400億ウォン。まずは政府出捐研究機関向けに「AI研究パートナー」を試験導入する。これは、AIが科学者の研究パートナーとして、実験設計、データ分析、結果解釈など研究プロセス全般に関わる新たな協業モデルを指す。
2026年のPBS廃止に伴い、政府出捐研究機関は戦略技術の研究開発(R&D)に重点を置く「戦略研究団」を運営する。NSTは2月中に、戦略研究事業を企画から実行まで一貫支援する専担組織を新設し、研究企画に向けた産・研・政の協議体も運営する計画だ。
政府出捐研究機関の評価体系も改める。従来の3年ごとの経営評価と6年ごとの研究評価を一本化し、研究と経営をあわせて評価する年次の統合評価体系を導入する。7月からは統合評価の結果を反映した成果給を支給し、優秀研究者に賞与を支給する制度も導入する。
科学技術情報通信部は、R&D企画・管理機関に対し、過去最大規模のR&D予算が適切に執行されるよう万全を期すよう求めた。また、米トランプ政権の「ジェネシス・ミッション」に類似した国家戦略を韓国でも進め、研究構造や行政、インフラ全般をAI中心に再設計する方針を示した。
ペ副首相は「世界的な成果を生み出すには、政府出捐研究機関も個別機関の枠を超え、大学や企業と相乗効果を生む目標を立てる必要がある」と述べ、「分散しているデータを、学習可能な高品質データへ高度化しなければならない」と強調した。
◆配達員活用の空き家調査を試行、郵政の役割拡大
13日は、国立中央科学館と郵政事業本部など計12機関が業務計画を発表した。ペ副首相は、国立中央科学館を中心とする情報共有プラットフォームの構築を求めるとともに、全国民のAIリテラシー向上の観点から、科学館がAI教育などで積極的な役割を担うよう要請した。
郵政分野では、福祉・行政分野の公共サービス受託業務の発掘や薬物検査など、2025年12月の業務報告で議論された大統領指示事項の進捗を点検した。
郵政事業本部は、配達員が空き家の有無を確認し、韓国不動産院と情報共有する空き家実態調査を試験運用する方針だ。あわせて、迅速配送に向けた首都圏物流センターの建設や翌日配送の拡大も進める。中小規模の荷主向け物流倉庫代行事業の開拓にも乗り出す。
郵便物の受付拠点拡大に向けては、コンビニ業界と提携する。廃医薬品や使用済みコーヒーカプセルなどを回収する「エコ郵便ポスト」も1000基まで増設する。
銀行店舗のない地域でも住民が郵便局などで対面の銀行サービスを利用できるよう、2026年から銀行代理業への参入が可能になる。これに合わせ、政策型・庶民型の金融商品の開発やフィンテック企業との提携、保障性保険の多様化も進める。
郵政事業本部は、物流作業へのAI実装やAI無人郵便局の実証など、AXの早期推進にも力を入れる。データ自動暗号化など情報保護を強化するとともに、国家情報資源管理院の火災で発生した郵便局ショッピングのサービス停止の再発防止に向け、災害復旧システムの高度化も進める。
ペ副首相兼長官は郵政事業本部に対し、郵便事業の赤字改善策を一段と強化するよう求めた。金融事業については、脆弱層を狙った金融詐欺への防止策整備も指示した。
◆国家AIコンピューティングセンター設立を加速、サイバー侵害対策も強化
14日は、宇宙航空庁と宇宙分野の研究機関、4大科学技術院、AI・ICT分野の所管機関や公共機関が業務報告を行った。
ペ副首相は、ヌリ号の4回目打ち上げ成功について研究者と参加企業をねぎらった。科学技術院に対しては、地域成長の拠点への転換に向け、地域の強みを持つ分野を軸に企業、研究機関、大学との連携を強化するよう求め、ディープテック創業での役割も強調した。
情報通信産業振興院(NIPA)は、先端GPU1万5000基の確保を目標にAIインフラ拡充を進める。2026年上半期中に国家AIコンピューティングセンターの実施協定締結と特別目的会社(SPC)の設立を完了する計画だ。2025年補正予算で確保した先端GPUについても、2月から活用支援を始める。
ペ副首相は、より高度な情報保護の必要性にも言及した。韓国インターネット振興院(KISA)は、2026年上半期までに「特別司法警察」の導入を完了する方針だ。現行制度では、企業が侵害事故を認めて自ら届け出ない限り、ハッキングの有無を調査できない。特別司法警察の導入により、強制調査が可能になるという。
科学技術情報通信部の関係者は「法務部と特別司法警察の導入に向けた協議を進めている」とした上で、「特別司法警察の調査水準に関するマニュアルも準備している」と述べた。
科学技術情報通信部は「科学技術・AIで切り開く大跳躍」に向け、部局と関係機関の総力を結集する方針だ。今回の業務報告で導き出した後続課題を具体化し、ペ副首相が自ら履行状況を点検する。