ニューヨーク市のジョラン・マムダニ市長は1月13日、個人として暗号資産を保有していないと明らかにし、前市長エリック・アダムス氏が公表した「NYCトークン」にも投資しない考えを示した。前市長時代の親暗号資産路線とは一線を画し、市政運営では規制と消費者保護を重視する姿勢を改めて打ち出した格好だ。
Cointelegraphによると、マムダニ市長は同日の記者会見で、個人的に暗号資産へ投資しているかとの質問に対し、「暗号資産は保有していない」と回答した。今週アダムス前市長が公表した「NYCトークン」についても、「投資する計画はない」と述べ、このプロジェクトは市政の方針とは無関係だと強調した。
「NYCトークン」は、アダムス氏が退任後に初めて公表した新たなプロジェクト。トークン販売で集めた資金を教育事業など社会的な目的に充てる方針を掲げている。アダムス氏は在任中、ニューヨーク市を世界的な暗号資産ハブにすると繰り返し訴えるなど、業界に友好的な姿勢で知られていた。
ただ、同トークンを巡っては公開直後から疑義が浮上した。流動性が急速に引き揚げられたとして、いわゆる「ラグプル(rug pull)」ではないかとの指摘が出ている。一部では未確認情報として、プロジェクトチームが意図的に流動性を除去し、投資家に数百万ドル規模の損失を与えたとの主張も広がった。オンチェーン分析企業Nansenのリサーチアナリスト、ニコライ・スンデルガード氏は「この事例は、ラグプルに該当し得る流動性の引き揚げとみることができる」との見方を示した。
マムダニ市長は選挙戦で、住宅費や生活費の上昇を主要争点に据え、得票率50.8%で当選した。暗号資産業界全体を正面から批判してきたわけではないが、一貫して消費者保護と規制強化を重視する立場を取ってきた。2023年には、ステーブルコイン発行体に対する消費者保護要件を強化する法案を支持したとされる。
こうした姿勢に対し、暗号資産業界からは懸念の声も出ている。Gemini共同創業者のタイラー・ウィンクルボス氏は、マムダニ市長の規制重視のアプローチがニューヨークのイノベーション競争力を損なう恐れがあると批判した。ドナルド・トランプ前米大統領の人工知能・暗号資産政策を担当するデイビッド・サックス氏も、公然と反対の立場を示している。
マムダニ市長は就任直後、「安全(safe)」「低廉(affordable)」「繁栄(prosperous)」を中核価値とする政策課題を提示し、前政権とは異なる市政運営を進める考えを示していた。市として暗号資産の活用を前面に出すのではなく、市民生活の安定と公共サービスの改善に軸足を置く方針を強調している。
一方、アダムス前市長は在任中の2022年、最初の3回分の給与をビットコイン(BTC)で受け取ると表明し、強い親暗号資産のメッセージを発していた。その後の相場変動を経ても「まったく後悔していない」と述べ、ニューヨークを世界の暗号資産中心地にする構想を訴え続けてきた。
今回のマムダニ市長の発言については、前市長時代の親暗号資産路線と距離を置くと同時に、「NYCトークン」を巡る足元の論争からも一線を引く狙いがあるとの見方が出ている。今後、ニューヨーク市の暗号資産関連政策が規制と消費者保護を軸に再編されるのか、それとも産業振興との接点を探るのかに関心が集まりそうだ。