EC各社が、特定の顧客層を狙った「ピンセット型」の会員制度を拡充している。中核顧客の購買傾向に合わせて特典内容を細かく設計し、利用頻度や属性ごとに最適化した特典で囲い込みを図る動きが広がっている。
Kurlyが提供する「Kurly Members」の累計加入者数は、2025年12月時点で275万人を超えた。前年の142万人から94%増えた。
Kurly Membersでは毎月、Beauty KurlyとKurly Only商品の専用割引クーポンを付与する。送料無料の適用基準も4万KRWから2万KRWに引き下げ、食への関心が高い主婦層や単身世帯の取り込みを進めた。
同社によると、継続率は97%に達し、購買転換率は非会員の6倍超となった。
月額1900KRWを支払うと、2000KRW分を積立金として還元する仕組みも、加入のハードルを下げた。Kurlyの関係者は「利用頻度の高い特典に絞って提供しているのが特徴だ」とした上で、「出店ブランドとの協業を強化し、特価商品の拡大など実質的なメリットを増やしていく」と述べた。
Shinsegae Groupは、2023年に立ち上げたグループ統合会員制度「Universe Club」を見直し、2026年から系列各社ごとの特化型会員制度へ切り替えた。第1弾として、SSG.comは日常の買い物特典を前面に打ち出した「SSG Seven Club」を投入した。
食品購入時には、決済額の7%を固定で積立金として還元する。主なターゲットは30〜40代で、事前通知の申込者70万人のうち40代の比率は43%だった。
Shinsegae Groupは3月、TVINGとのバンドルプランも追加し、20〜30代にも対象を広げる。SSG.comの関係者は「買い物時の積立特典に集中した、分かりやすい会員制度だ」と説明。「連動した特価商品やプロモーションを継続し、利用者が実感できるメリットの向上に力を入れる」とした。
Naverは、「Naver Plus Membership」に選択型の設計を取り入れた。外部プラットフォームと連携し、利用者が特典を選んで組み合わせられるのが特徴だ。Spotify、Netflix、Xbox Game Pass、Uber、Lotte Mart Zeta Passなどを組み合わせて利用できる。
同社によると、Spotifyは20代、NetflixとGame Passは30〜40代男性、マート関連特典は主婦層の利用が中心という。
外部プラットフォームとの連携は、新規会員の獲得にもつながった。Netflixとの提携直後には、1日当たりの平均新規加入者数が1.5倍に増えた。新規加入者の60%超を30〜40代が占め、とりわけ35〜49歳の男性会員の増加が目立った。
Naverの関係者は「会員の継続率は95%水準と高く、ロイヤルティも高い」とした上で、「パートナー企業のポートフォリオを拡大し、協業を高度化していく」と述べた。
11stは、会費無料の会員制度「11st Plus」を2025年5月に始めた。マート、ビューティー、キャンパスなどカテゴリー別の「クラブ」を設け、分野ごとに割引率を高める仕組みだ。
マートでは最大7%の積立、ビューティーでは人気ブランドを最大25%割引、キャンパスでは学生認証を通じてデジタルIT商品 の特価を提供する。コストパフォーマンスを重視する20〜30代や大学生層への訴求につながっており、加入者数は130万人を超えた。
11stの関係者は「物価高を受け、実利を重視する消費者が増えている。会費無料の会員制度が固定客の確保に効果を上げている」と説明。「2026年も11st Plusを軸に顧客獲得に注力する」と述べた。
こうした会員制度の高度化を支えているのが、データ分析技術の進化だ。小売業界では、会員制度の設計やマーケティングの効率化を支える技術基盤として活用が進んでいる。
イ・ウンヒInha University消費者学科名誉教授は「業界ではデータサイエンティストの採用を大幅に増やす流れが続いている」と指摘する。その上で、「ピンセット型会員制度へのニーズは以前から大きかったが、実際に反応する顧客と、費用だけがかかる顧客を見分けるのは難しかった」と説明した。AIなどの技術進展により、費用対効果を最大化するマーケティングの最適化が可能になったとしている。