国内のメディア消費の重心がオンライン動画サービス(OTT)へ移るなか、放送エコシステムの整備財源である「放送通信発展基金」の見直し議論が停滞している。放送広告収入の急減で基金財源の先細りが懸念される一方、国内外OTT間の逆差別や通商面の懸念が重なり、制度改正は進んでいない。
国会議案情報システムによると、チョ・インチョル議員らが第22代国会の開会直後に提出した「放送通信発展基本法改正案」は、2024年9月に法案小委員会で審査された後、約1年半にわたり停滞している。基金負担の公平性を巡る議論は2022年から続いているが、政権交代や国会構成の変化を経ても目立った進展はみられない。
現行制度では、放送通信発展基金は地上波、総合編成チャンネル、報道チャンネル、有料放送事業者を対象に、放送広告売上高を基準として賦課している。一方、OTTは「付加通信事業者」に分類されており、基金負担の対象外だ。
改正案は、売上高や利用者数が一定基準を超えるOTT事業者に対し、売上高の1%以内で基金負担を求める内容だ。基金によって整備された放送通信インフラや利用者保護の枠組みの恩恵をOTTも受けている以上、一定の公的負担を分担すべきだとの考え方に基づく。
背景には、放送業界の収益悪化による財源圧力がある。放送通信委員会が公表した「2025放送通信広告費調査」によると、2024年の放送広告費は前年比5.0%減の3兆2191億ウォンだった。これに対し、OTTを含むオンライン広告市場は同8.2%増の10兆1514億ウォンに拡大した。
もっとも、制度改編にはなお高いハードルがある。最大の論点は、国内外事業者の間で規制の逆差別が生じかねない点だ。TvingやWavveなどの国内OTTは、赤字構造のなかでも通信会社にネットワーク利用料やコンテンツ配信ネットワーク(CDN)費用を支払っている。そこに基金負担が上乗せされれば、競争力を損なうとの懸念が強い。NetflixやDisney+といったグローバルOTTに対し、実際に基金負担を義務付けるのは容易ではないとの指摘も出ている。
国内業界の関係者は「ネットワーク利用料すら負担していないグローバル事業者に対し、実効性のある徴収手段を確保できなければ、結局は国内企業だけが二重規制を受けることになる」と訴える。
政界には、制度見直しが通商問題に発展することを警戒する見方もある。昨年の米韓首脳会談では、ネットワーク利用料やオンラインプラットフォーム規制を含むデジタルサービス関連政策について、米国企業を差別しないとする条項が公式文書に明記された。
グローバルOTT側は、基金負担ではなく直接投資によって貢献しているとの立場だ。Netflixは2023年から4年間で、国内コンテンツに3兆3000億ウォンを投資すると表明している。2024年基準のNetflix Koreaの売上高は8997億ウォンで、フランスが義務付ける現地売上高の20~25%の再投資基準を上回るとしている。
専門家の間では、基金制度そのものの再設計が必要だとの見方が強い。韓国OTTフォーラムのアン・ジョンサン会長は「国内OTTが赤字に苦しむなかで基金を賦課すれば二重負担となり、海外事業者への執行力も担保できず、逆差別を招く」と指摘する。そのうえで「グローバルOTTによるIP独占型の投資手法は、国内産業の自立的な成長力を損なう恐れがある。メディア環境の変化を踏まえた精緻な政策設計が急務だ」と述べた。