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有力AI企業がWebブラウザ市場で攻勢を強めている。OpenAIやPerplexityが相次いで自社ブラウザを投入し、MicrosoftもEdgeのAI機能を拡充している。ブラウザの利用体験を塗り替えるのか、あるいはGoogle Chromeの牙城は揺るがないのかが焦点だ。

OpenAIとPerplexityは2025年、それぞれ自社Webブラウザ「ChatGPT Atlas」「Comet」を投入した。MicrosoftもEdgeにCopilotを組み込み、閲覧中のコンテンツの横でチャットボットに質問できる機能を提供している。

業界では、AIがブラウザ市場における過去20年で最大級の変化になり得るとの見方が出ている。ただ、足元のシェア動向を見る限り、大勢に変化はない。

Cloudflareによると、グローバル市場でのGoogle Chromeのシェアは63%超。指標は異なるものの、StatCounterの12月データでも、Chromeは71.23%と、Safariの14.84%を大きく上回った。

こうした中、GoogleもAIを軸にしたブラウザ競争の激化をにらみ、GeminiのChromeへの統合を急いでいる。

Googleは2025年5月、Google検索とChromeで、ChatGPTのような対話型体験を提供する「AIモード」を投入した。2025年末に発表したGeminiモデルには、OpenAIのGPT-5を上回るとの評価もある。最近では、開いているタブをパーソナライズした対話型アプリに変換できる実験的ツール「Disco」も公開した。

英Financial Times(FT)は、市場調査会社Forresterのシニアアナリスト、ステファニー・リウ氏の見解を伝えた。同氏は「AI機能を搭載しただけのブラウザでは差別化にならない」と指摘。「OpenAIは、より多くのユーザーを引き付けるために意味のある価値提案を示す必要がある。ただ、強力で広く使われている既存ブラウザとの競争は容易ではない」と述べた。

AIを、長らく大きな変化のなかったブラウザ市場を刷新する鍵とみる向きは多い。一方で、実際のユーザー体験はなお期待に届いていないとの指摘もある。

FTによると、ユーザーの間ではAIブラウザ機能の不具合が目立つとの不満が出ている。個人情報保護への懸念に加え、Webサイトに埋め込まれた悪意ある指示で大規模言語モデル(LLM)を誤作動させるプロンプトインジェクション(prompt injection)など、サイバーセキュリティ上の脅威も課題になっている。

それでも、Chromeに挑むAI企業の攻勢は今年さらに強まる可能性がある。ブラウザが、ユーザー接点の強化、モデル学習に必要なデータの収集、AIエージェントの実行基盤の確保という面で、戦略上の要衝とみなされているためだ。

現在、多くのユーザーはGoogleやMicrosoftが提供するブラウザ経由で、ChatGPTなどのAIチャットボットにアクセスしている。AI企業が自社ブラウザの利用者基盤を拡大できれば、LLMの学習に必要な有用なデータを確保しやすくなり、広告事業にも活用しやすくなるという。

人の介在なしに特定の作業を自動でこなすAIエージェントを巡る競争が激しくなるなか、ブラウザの重要性は一段と高まっている。FTは、ブラウザがAIエージェントの実行基盤として認識されていると報じた。

OpenAIは近く、ChatGPT Atlasで複数プロファイルへの対応や、タブのグループ化機能を提供する予定だ。ChatGPT Atlasのプロダクトリードを務めるアダム・フライ氏は、「これらの機能は、Atlasへの長期投資の第一歩だ」と語った。

一方、PerplexityでCometを担当するジェシー・ドワイヤー氏はFTに対し、ブラウザを「ユーザーの思考のOS(operating system of your mind)」のようなものとして捉えていると述べた。

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