米下院で、EVの電子式ドアを巡る安全対策を強化する法案が提出された。車両電源が失われた場合でも乗員が容易に脱出できるよう、手動解放装置の搭載を義務付ける内容で、電子式ドアを採用するTeslaなどの車両が事実上の対象となる可能性がある。
EV専門メディアのElectrekによると、イリノイ州選出のロビン・ケリー下院議員は8日(現地時間)、「SAFE Exit Act」を提出した。法案は、車両の電源が完全に失われた場合でも、乗員が見つけやすく操作しやすい手動のドア開放装置を備えるよう求めるものだ。
車両ドアの開放方法を巡り、こうした要件を法案として打ち出すのは初のケースとされる。成立すれば、電子式ドアを採用する自動車メーカーは、新車設計の見直しを迫られる可能性がある。
Teslaをはじめ、自動車業界では従来の機械式ドアハンドルに代わり、電子信号で解錠・開放する電子式ドアラッチの採用が広がっている。ボタンやセンサーで作動する仕組みで、デザインの自由度や空力性能の向上につながる点が利点とされる。
一方で、重大事故などで車両電源が失われた際、手動解放機構の位置や使い方が分かりにくいと、ドアを開けられず脱出が遅れる恐れがあるとして、安全面での懸念が指摘されてきた。
多くの車種には手動解除機能が備わっているものの、その位置が直感的に分かりにくい、あるいはすぐに操作しづらい例が少なくないという。ケリー議員はこの点を問題視し、米運輸省の国家道路交通安全局(NHTSA)に対し、電子式ドアの性能基準や表示要件の整備を求めた。
法案には、各ドアに手動解除方法を明示する表示を義務付ける条項のほか、電源遮断時に救助隊が車外から車内へアクセスできる手段の確保を求める条項も盛り込まれた。直感的に使える手動開放装置の必要性を訴えてきたConsumer Reportsも支持しているという。
ケリー議員は法案提出にあたり、Teslaとイーロン・マスク氏を名指しして厳しく批判した。TeslaのModel 3とModel Yでは、前席には比較的分かりやすい手動解除機構がある一方、後席ドアの手動解除方法は利用者が容易に認識しにくい点が問題視されている。
今回の動きは、中国で同様のEV安全規制が制度化されたのに続くものでもある。Teslaは中国での規制変更への対応を進めているとされ、法案が成立すれば、米国向け車両の設計にも影響が及ぶ可能性がある。
業界では、Teslaを強く意識した法案の構成には議論がある一方、非常時の脱出安全性を高める趣旨自体は妥当だとの見方が出ている。専門家は、車内に閉じ込められた際に手動解除装置を見つけられずに起きる事故の防止に焦点を当てた規制だとして、法案の必要性を指摘している。