写真=macfoxbike

電動自転車では、もはや出力の高さだけでは走行体験を差別化しにくい。製品価値を左右する要素として、モーターの静粛性が存在感を高めている。静かで滑らかな駆動感は上質さにつながる一方、耳障りな作動音は高性能なモデルでも体験価値を損ないかねない。

世界有数の電動自転車向けモーターメーカーであるBafangは、こうした静粛性の向上に長年取り組んできた。5日付けの電気自動車専門メディアElectrekは同社のモーター試験施設を取材し、静かなモーターは単一部品の性能ではなく、システム全体の設計最適化によって実現されると伝えた。

電動自転車のモーター騒音は、大きく電磁音と機械音に分けられる。電磁音は固定子と回転子の間で生じる磁力の変動に起因し、高周波のうなりとして現れる。アシストレベルが高く、負荷が大きい条件では目立ちやすい。これに対し機械音は、ギアのかみ合い、ベアリング、回転体のアンバランスなどが主な発生源となる。

Bafangは、後から音を抑え込むのではなく、まず発生源を正確に切り分けて特定し、設計段階から対策する手法を採っているという。

電磁音への対策では、高精度の磁気回路シミュレーションと高品質な電磁鋼板の積層により、磁気振動や高調波を最小限に抑える。構造面では、高剛性のハウジングと均一なエアギャップ設計によって振動の増幅を抑制。さらに制振マウント構造を採用し、モーターの微細な振動がフレームに伝わって共振音として増幅されるのを防ぐ。

駆動系には、耐久性と静粛性を両立する複合素材ギアを採用する。自己潤滑性を備える素材を使う場合が多く、金属製ギアに比べて負荷時でも作動音を抑えやすいという。

ローターには動的バランシングを施し、偏心による振動を低減する。ベアリングについても、回転速度や荷重特性に応じて低騒音仕様を選定する。こうした要素はスペック表では目立ちにくいが、積み重ねが滑らかで静かな走行感覚を支えている。

同社は、吸音環境と精密測定機器を備えた専用の音響ラボも運用している。防音仕様の音響試験チャンバーでは残響を極力抑えた環境を整え、エンジニアが動作条件や各種変数の変更が特定周波数帯の騒音に及ぼす影響を分析する。試験は、測定への人の影響を避けるため、隣室から遠隔で監視し実施する。

こうしたデータ主導の開発により、利用者が「理由は説明しにくいが、明らかに良くなった」と感じるような改善が、世代を追うごとに積み上がっていく。

電動自転車市場が成熟する中、競争の軸は単純な出力の大小から、精緻さや品質、静粛性へと移りつつある。静かなモーターは乗り味を高めるだけでなく、歩行者や規制当局が電動自転車をどう受け止めるかにも影響を与える。Bafangの取り組みは、利用者が意識しにくい領域にこそ、製品競争力を左右するエンジニアリングが潜んでいることを示している。

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