資産市場で長く続いてきた「金か、ビットコインか」という議論が、あらためて注目を集めている。世界的に市場の変動性が高まるなか、伝統的な安全資産である金は連日のように過去最高値を更新している。一方、「デジタルゴールド」とも呼ばれるビットコインは、重要な節目の維持に苦戦している。
2025年の貴金属市場は、記録的な上昇の年となった。金価格は年初来で70%超上昇し、資産保全を重視する投資家マネーの受け皿となった。
銀も約150%上昇し、1979年以降で最高の年間リターンを記録した。プラチナも記録的水準まで上昇しており、貴金属市場全体に強い上昇基調が広がった。
背景にあるのは、利下げ期待と地政学リスクの高止まりだ。投資家は長期的な通貨価値の低下やマクロ経済の不透明感に備える手段として、実物資産への選好を強めている。
世界金協議会(WGC)のデータも、こうした流れを裏付ける。2025年は5月を除いて金連動ETFの保有量が毎月増加した。短期的な投機資金ではなく、長期目線の資産配分マネーが継続的に流入していることを示している。世界最大の金ETFであるSPDR Gold Trustの保有量は、2025年だけで20%超増えた。
これに対し、ビットコインの値動きは対照的だ。理論上、ビットコインが「デジタルゴールド」としての地位を確立しているのであれば、法定通貨への不信や地政学的緊張が強まる局面で、金と歩調を合わせて上昇するか、それを上回るパフォーマンスを示しても不思議ではない。だが実際には、株式などリスク資産を揺さぶるマクロ環境の変化に依然として敏感に反応している。
上値を抑えている要因の1つが、市場のポジショニングだ。ビットコイン市場では長期間にわたりレバレッジ主導の取引が積み上がっており、相場が反発するたびに利益確定売りが出やすい。これが戻りを鈍らせる要因になっている。
米国債利回りの変動拡大やドル高進行も逆風だ。投資家心理が大きく悪化し、資産保全が優先される局面では、資金は値動きの大きい暗号資産より、実績のある安全資産である金へ向かいやすい。
Catalyst Fundsの最高投資責任者(CIO)、デービッド・ミラー氏は報道機関のインタビューで、「金とビットコインはいずれも過去に大きく上昇した年があったが、それでもビットコインがデジタルゴールドではないことは明らかだ」と述べた。
同氏は、金が各国中央銀行の準備資産として保有される、名実ともに機関投資家中心の資産であるのに対し、ビットコインはなお個人投資家主導の色彩が強いと指摘した。
さらにミラー氏は、金はビットコインには果たせない通貨代替の準備資産として機能していると説明した。ビットコインにも、財政拡大や通貨安に対する長期的なヘッジ手段としてポートフォリオ上の意義はあり得るものの、金と同列に論じるにはなお規模の差が大きいとの見方を示した。
ウォール街でも、金の強さは2026年も続くとの見方が目立つ。Goldman Sachsは基本シナリオとして、2026年の金価格が1オンス当たり4900ドルまで上昇する可能性があると予測した。リスク要因次第では、さらに上値を試す余地があるとしている。
足元の市場環境は、ビットコインに突きつけられた課題も浮き彫りにしている。高い収益性を狙うリスク資産という位置付けを超え、真に「価値保存手段」として認められるには、危機時にも金に近い信認を獲得する必要がある。レバレッジ依存の大きい値動きから脱し、機関投資家や中央銀行の資産配分に組み込まれるだけの市場構造の成熟が問われている。