写真=Shutterstock

2026年のテック業界では、AIへの積極投資とバブル懸念がどこで折り合うのかが最大の焦点となる。過熱感を指摘する声は根強い一方、AI市場全体が急失速するとの見方はなお少数派だ。GoogleとOpenAIの主導権争い、AppleのSiri刷新、AIを悪用したサイバー攻撃、AIエージェントの本格普及などが、今年の主要テーマとして浮上している。

スマートフォン分野では、AppleがAIで巻き返せるかが注目される。加えて、Samsung Electronicsが先行してきた折りたたみ端末市場にAppleが参入するかどうかも関心を集める。金融分野では、2025年に大きなテーマとなったステーブルコインが、暗号資産の枠を超えて決済インフラとして定着できるかが問われる年になりそうだ。

AIバブルを巡る議論は、2026年も続く公算が大きい。巨額投資に見合う収益や成果がまだ十分に見えていないとして、過剰投資を懸念する見方は根強い。

一方で、仮に一部企業の明暗が分かれても、AI業界全体が危機局面に陥るとみるのは行き過ぎだとの見方も多い。市場全体の崩壊よりも、企業ごとの選別が進むとの見方が優勢だ。

米シリコンバレーの有力VC、Andreessen Horowitzを率いるベンチャーキャピタリストのベン・ホロウィッツは、「誰もが価格は下がらないと信じるときにバブルは生まれる。実際にはバブルの中にいないことを示す最も明確な証拠は、皆がバブルについて語っていることだ」と述べている。

ニュースレター「Platformer」の創業者兼編集者であるケイシー・ニュートンも、2026年の展望記事で、AIバブルを巡る論争は続くものの、全面的な崩壊には至らないとの見方を示した。一部スタートアップが行き詰まる可能性はあるが、市場全体が崩れるシナリオではないという。

主導権争いでは、OpenAIが優位を保つのか、それとも巻き返しを進めるGoogleが逆転するのかが最大の見どころだ。

2022年末のChatGPT投入以降、GoogleはAIレースで出遅れた印象が強かった。ただ、2025年下期にGemini 3を投入して以降、差を急速に縮めつつある。2026年に追い上げがどこまで進むかが注目される。

The Informationのステファニー・パラゾロ記者は、Geminiが週次アクティブユーザー数でChatGPTを上回る可能性があると予測した。Googleが検索ユーザーに対し、AIモードとGeminiをさらに前面に押し出せば、逆転は十分あり得るという見立てだ。

2026年のAI競争では、Appleの動向も重要な焦点になる。これまでAIブームから一定の距離を置いてきたAppleだが、今年は生成AIを組み込んだ次世代Siriを前面に打ち出し、巻き返しを狙う構えだ。

生成AIベースのSiriへの刷新は当初、前年中の実施が見込まれていたが、社内基準を満たせず2026年にずれ込んだ。Appleは新アーキテクチャを土台に次世代Siriを開発しているとされる。ChatGPTやGeminiも音声機能を強化する中、Appleが実用水準の成果を示せるかが問われる。

サイバーセキュリティ分野では、AIを悪用した攻撃の高度化が新たな懸念材料として浮上している。かつては実用性に乏しいとの見方もあったが、足元では状況が変わりつつある。

米Wall Street Journalによると、高度な技術知識を持たない攻撃者でも、AIモデルを使って説得力のあるディープフェイクを作成したり、パスワードや2段階認証コードを盗むための偽サイトやメールを容易に作成したりできるようになっている。さらに、ブラウザにAIアシスタントが組み込まれることで、攻撃者がAI秘書をだますよう設計したページ内に悪意あるコマンドを埋め込むことも可能になったという。

米連邦捜査局(FBI)の元サイバー・タスクフォース要員で、現在はセキュリティ企業SpyCloud Labsの上級副社長を務めるトレバー・ヒリゴスは、「AIは、より多くの人がより高度なマルウェアへ容易にアクセスできる状況を生む。本当に深刻だ」と指摘した。

WSJはこのほか、Googleの検知を回避し、新たな悪性機能を生み出すために自らコードを難読化できるボット型ソフトウェアも最近見つかったと報じた。ケイシー・ニュートンは2026年について、国家レベルの攻撃者やサイバー犯罪集団が大規模言語モデル(LLM)を武器化し、深刻な被害をもたらす可能性があると予測する。そうなれば、AI安全性を重視する勢力が規制強化を求める根拠として、具体的な事例が示されることになる。

AIエージェントも、2026年を象徴するキーワードの1つだ。単なるチャットボットではなく、LLMを活用して人手を介さず特定業務を自動化する仕組みとして期待が高まっている。実用面で有効性を証明できれば、AI市場ではバブル懸念が後退し、本格普及への期待が一段と強まる可能性がある。逆に期待先行に終われば、バブル論は翌年以降にも持ち越される公算が大きい。

企業向けソフトウェアのビジネスモデルにとっても、AIエージェントは大きな変数となる。ERP、CRM、HR、ITSMなど、データを蓄積・管理するSystem of Recordの領域が、AIエージェントによって根本から見直しを迫られるとの見方が出ている。サブスクリプション型SaaSの一部は、AIエージェントの普及によって競争力が相対的に低下するとの観測も少なくない。

Andreessen Horowitz(a16z)も、2026年に注目すべきシナリオの1つとして、企業向けソフトウェア市場でSystem of Recordが主導権を失い始める可能性を挙げた。AIが意図から実行までの距離を縮め、モデルが運用データを直接読み書きしながら推論できるようになれば、ITSMやCRMは受動的なデータベースから、自律的に動くワークフローエンジンへと変わるとみている。

自動運転分野では、ロボタクシーの拡大が本格的な検証局面に入る。2025年は自動運転車の大衆化に向けて大きな前進が見られた。Waymoはロボタクシーの運行エリアを広げ、Amazonもこの分野に参入した。Amazonは9月以降、ラスベガスでロボタクシーのテストを進めており、今後はマイアミとテキサス州オースティンにも広げる計画だ。

もっとも、現状だけでロボタクシーが大衆化へ順調に進んでいると断定するのは早い。Semaforは、自動運転が2026年に大きな転機を迎え、それが追い風にも逆風にもなり得るとみる。普及が進めば、人やペットが関わる事故の可能性が高まるのは避けられず、自動運転車がそうした事故に耐えうるほど社会に定着しているかはなお不透明だという。Semaforは、単一の事故でUberの自動運転構想が頓挫し、Cruiseも事故の影響でかろうじて持ちこたえている状況だと伝えた。

ハードウェア分野では、折りたたみiPhoneが現実味を帯びてきた。現在の予測通りであれば、Appleは2026年にSamsung Electronicsが切り開いた折りたたみスマートフォン市場に参入する可能性が高い。BloombergやThe Informationなどによると、Appleは秋にiPhone 18シリーズの一部として折りたたみ型iPhoneを投入すると見込まれている。

端末はブック型で、複数カメラを搭載し、生体認証にはFace IDではなくTouch IDを採用するとの見方が出ている。SamsungやGoogleの折りたたみ端末とは異なり、横向きにした際の画面比率は、最も大きいiPadに近い設計になるとも報じられている。

折りたたみiPhoneは、Appleが手掛けるiPhoneの中でも特に複雑な製品になるとみられる。投入時期に間に合わせるため、Appleは当初同時期に計画していた折りたたみiPadの投入を延期し、関連エンジニアを折りたたみiPhoneの開発に再配置したとされる。The Informationは、SamsungやGoogleが折りたたみ端末に通常モデルより高いプレミアム価格を設定しているように、Appleも同様の価格戦略を採る可能性が高いと報じた。

金融業界では、ステーブルコインが暗号資産の取引手段を超え、決済インフラとして機能できるかが引き続き焦点となる。2025年にステーブルコインへの関心が高まったことで、これを決済基盤に組み込もうとする動きも加速した。ただ、実際の活用を巡っては、期待と懐疑がなお併存している。

JPモルガンが前年にまとめたリポートによると、ステーブルコイン需要の大半は依然として暗号資産エコシステム内で発生している。取引や分散型金融(DeFi)の担保、暗号資産企業の待機資金といった、いわゆる「クリプト・ネイティブ」な用途が全体の88%を占め、実物決済は6%にとどまるという。

その一方で、クロスボーダー送金や決済・清算手段としてステーブルコインを活用しようとする動きは加速しており、今年はそれが実質的な成果につながるかが問われる。暗号資産VCのDragonflyでマネジングパートナーを務めるハシブ・クレシは、新たな決済レールがステーブルコインの採用拡大を後押しするとみている。とりわけ新興市場で日常利用を広げるうえで、こうしたチャネルが重要な役割を果たすとの見方を示した。

キーワード

#AI #生成AI #Google #OpenAI #Apple #Siri #Gemini #ChatGPT #AIエージェント #ロボタクシー #折りたたみiPhone #ステーブルコイン
Copyright © DigitalToday. All rights reserved. Unauthorized reproduction and redistribution are prohibited.