Mastercardのコンテンツ編集を統括するベン・フォックス・ルビン副社長が、Circleのステーブルコイン戦略を紹介した。Circleは、決済や送金をオンチェーン化する基盤の整備を進めており、将来的には利用者がステーブルコインを意識せず使う段階で本格的な普及が進むとの見方を示している。
Mastercardは数日前、暗号資産関連のパートナープログラムを公表し、Circleも参加企業に加わった。Mastercardは、デジタル資産と既存の決済インフラを結び付けるブロックチェーンベースの決済ネットワーク構築に取り組んでいる。
ルビン副社長は、Circleの最高コマーシャル責任者(CCO)カシ・ラザギ氏の発言を引用する形で、同社の事業戦略とビジョンを説明した。ラザギ氏は世界経済フォーラム出席後、Mastercardのニュースルームとの対談にも応じたという。
ラザギ氏によると、Circleはブロックチェーンベースの決済・金融サービスを一般利用者が利用できる形にするため、インフラ整備を進めている。開発者向けツールやCircle Payments Network、Arcを通じて、企業によるブロックチェーン決済の導入を後押しする方針だ。
同氏は、オンチェーンでの資金移動への移行を加速させる金融プラットフォームの構築を進めていると説明した。
ラザギ氏は「金融インフラがブロックチェーンに移れば、送金はより速くなり、コストは下がり、透明性は高まる。決済エコシステム全体の変革は、1社だけで実現できるものではない」と述べた。
また、銀行やカードネットワークなど既存の金融機関も、ブロックチェーン技術を受け入れる方向に動いているとの見方を示した。既存プレーヤーを置き換えるのではなく、共存しながら発展するエコシステムとして捉える動きが広がっているという。資金移動コストはゼロに近づき、処理速度もさらに高まるとの期待も示した。
ラザギ氏は、ステーブルコインの主な活用領域として3つを挙げた。第1はトレーディングと投資だ。ビットコインやイーサリアムなどのデジタル資産に投資する利用者が、USDCを使ってポジションを柔軟に調整し、価値の安定を図る用途を想定している。
第2は決済、とりわけクロスボーダー送金だ。
同氏は「ブロックチェーンによる資金移動は、中間プロセスを減らし、手数料を抑え、従来は数日かかっていた決済を数秒から数分で処理できる。銀行の営業時間にも左右されない」と語った。
第3は価値保存だ。同氏は「イラン、ベネズエラ、アルゼンチンのように自国通貨の価値下落に直面している国では、米ドル連動型のステーブルコインが資産防衛の手段になっている」と指摘した。決済手段と価値保存手段の両面で需要が広がれば、ステーブルコインの時価総額は現在より大きく膨らむ可能性があるとの見方も示した。
ステーブルコインがいつ主流化するかについては、「人々がそれをステーブルコインだと意識しなくなった時点が本当の普及だ」との認識を示した。「ユーザーは単に1ドルを持ち、1ドルを送るだけになる。WebサイトでHTTPを意識せずメールを送るのと同じように、オンチェーンのインフラが水道や配管のような存在になる瞬間だ」と説明した。
CircleとMastercardの協業については、ブロックチェーン決済の普及に向けて双方に明確な役割があるとした。「Mastercardは決済に対する信頼を提供するだけでなく、取引へのアクセスを容易にし、仲介コストや摩擦を減らす役割を果たす。時間の経過とともに、実際のコスト効率も高まる」と述べた。
Circleは、Mastercardとの連携がステーブルコインとデジタル資産の普及拡大につながるとみている。ラザギ氏は「資金移動の未来はオンチェーンにある。将来的にはオンチェーンで処理する方が望ましい。インフラ、規制、コンプライアンスの面ではなお課題が残るが、Mastercardが本格的にオンチェーンインフラを構築し、顧客向けにオンチェーン製品の展開を進めれば、採用のスピードはさらに加速する」と期待を示した。