Amazon Web Services(AWS)のオブジェクトストレージ「S3(Simple Storage Service)」が、2026年3月で提供開始から20年を迎えた。AWSは、セキュリティや耐久性といった設計原則を維持しながら、運用規模を大幅に拡大。Rustへの移行や自動検証の導入で信頼性を高めるとともに、データ・AIワークロード向け基盤としての機能拡充も進めている。
AWSは2006年3月14日、S3の提供を開始した。当時、Amazonが公表した告知は短く、ジェフ・バー氏(Amazon シニア・エバンジェリスト)のブログ記事も簡潔な内容にとどまった。このサービスが後にエンタープライズIT市場を大きく変えると、当時は広く予想されていたわけではなかった。
AWSによると、S3は5つの設計原則に基づいて構築された。セキュリティ、99.999999999%の耐久性、可用性、性能、スケーラビリティで、これらの原則は20年を経た現在も変わっていないという。
一方、運用規模は大きく拡大した。提供開始当初は15ラック、400台のストレージノード、容量は約1ペタバイトだったが、現在は39のAWSリージョンと123のアベイラビリティゾーンで数百エクサバイトのデータを保存している。処理するリクエストは毎秒2億件を超える。
保存しているオブジェクト数は500兆個超に達した。単一オブジェクトの最大サイズは5GBから50TBへ拡大した。1GB当たりの価格は15セントから2セント水準へ低下し、85%下がった。AWSは、S3 Intelligent-Tieringの利用によって顧客が削減したストレージ費用は累計60億ドルを超えるとしている。
技術面での刷新も進む。AWSは8年をかけて、S3の中核コードをRustに書き換えているという。AWSは、Rustによりコンパイル時にメモリ関連の不具合を防ぎやすくなるほか、形式手法に基づく自動検証によって、コード変更のたびに整合性を確認していると説明した。
S3の耐久性を支える仕組みとしてAWSが挙げるのが、全データをバイト単位で継続的に点検するマイクロサービス群だ。データ破損の兆候を検知すると、自動的に復旧システムが作動するという。
AWSは後方互換性も重視している。2006年にS3向けに作成したコードが、現在でも修正なしで動作するとしている。インフラは世代をまたいで更新し、リクエスト処理コードも全面的に作り直した一方で、20年前に保存したデータとAPIは維持していると説明した。
AWSはS3を単なるストレージにとどめず、あらゆるデータ・AIワークロードの基盤へと発展させる方針だ。最近投入した「S3 Tables」は、Apache Icebergベースのマネージドテーブルサービス。「S3 Vectors」は、セマンティック検索や検索拡張生成(RAG)向けのベクターストレージとして位置付ける。
AWSによると、S3 Vectorsは提供開始から5カ月で、インデックス数が25万、ベクター数が400億超に達した。