ステーブルコイン市場が約3000億ドル(約45兆円)規模に拡大する一方、供給の相当部分が実際の取引に回らず長期滞留し、暗号資産市場の流動性や取引効率を損なう可能性があるとの分析が浮上している。
Cointelegraphが12日(現地時間)に報じた。ステーブルコインは足元で、デジタル資産市場における実質的な「現金基盤」として機能している。暗号資産取引では法定通貨の代替手段として広く使われ、流動性の供給源としても中核的な役割を担う。
ただ、オンチェーンデータ分析プラットフォームのDeFiLlamaとGlassnodeのデータによると、供給量の多くは取引所ウォレットや個人ウォレット、企業の口座などに保管されたまま、数カ月にわたってほとんど動いていない。取引や投資に積極的に使われるというより、保管目的で保有される傾向が強まっていることを示している。
こうした資金の滞留は、市場流動性にも影響を及ぼし得る。ステーブルコインは暗号資産市場で主要な取引ペアを支える基盤資産だが、大口資金が長期間市場外に近い形で留まれば、実際に売買に使われる流動性は細る。結果として、市場効率の低下を招く可能性がある。一部では、スプレッドの拡大や約定の遅れ、想定以上に速い流動性の低下につながりやすいとの見方も出ている。
とりわけ市場が急変するストレス局面では、この「滞留資金」が弱点になりかねない。理論上は即時に流動性を供給できる資産であっても、実際には長期保有にとどまる資金が多ければ、必要な局面で市場に十分な資金が流れ込まない恐れがあるためだ。
背景には、投資家のリスク回避姿勢の強まりもあるとみられる。過去に一部の中央集権型の金融サービスが破綻した後、投資家の間では利回り追求より資産保全を優先する動きが広がり、資金を積極運用せずステーブルコインのまま保有する傾向が強まったという。その結果、融資や流動性供給、DeFi投資などの活動が縮小し、資本活用の度合いが低下したとの評価もある。
専門家は、ステーブルコインが単なる保管手段にとどまらず、実際の金融活動でより積極的に使われる必要があると指摘する。ステーブルコインは、スマートコントラクトを通じて自動化された金融取引を実行できる「プログラマブルマネー」としての特性を持つ。この資金が長期にわたり滞留したままでは、暗号資産エコシステム全体の流動性と成長余地を縛る要因になりかねない。
ステーブルコインがデジタル金融インフラとして定着を深めるには、価値保存の手段にとどまらず、決済や融資、投資といった幅広い経済活動で資金が循環する仕組みづくりが欠かせない、との指摘だ。