NaverとKakaoが、相次いで独立サービスの整理に踏み切る。Naverは対話型AI「Clova X」と生成AI検索「Cue:」を4月9日に終了し、関連技術を検索・ショッピングに組み込む。Kakaoも動画サービス「KakaoTV」を6月30日に終了する。両社とも、個別サービスの拡張より中核プラットフォームへの機能集約を優先し、実利用と収益化につなげる構えだ。
◆独立サービスを整理、中核プラットフォームに軸足
業界によると、Naverは12日、2023年下半期から提供してきたClova XとCue:を4月9日に終了すると明らかにした。Clova Xは自社大規模言語モデル「HyperClova X」を基盤とする対話型AIサービスで、Cue:は検索から予約、購入までをつなぐバーティカル検索の実証サービスとして運営してきた。
Naverは今回の終了について、AI事業の後退ではなく、正式サービスへの機能移管の一環だと説明している。Clova XとCue:はHyperClova Xの実験の場として役割を果たしてきており、今後はそこで得た成果を本サービスに反映する段階に移るという。
一方で業界では、モデル性能を前面に押し出した独立AIプラットフォームの競争よりも、利用者接点の大きい検索やショッピングにAIを組み込み、実利用と収益化の可能性を高める方向へ戦略の重心を移したとの見方も出ている。
Kakaoの判断も同じ文脈で捉えられている。Kakaoは約9年間運営してきたKakaoTVを6月30日に終了する。Daum TVpotを起点に、ライブ配信やオリジナルコンテンツ、VODを備えた総合動画プラットフォームを目指してきたが、YouTubeやNetflixなど海外勢の攻勢に加え、国内競合の台頭もあり、影響力は次第に低下していた。
2021年の投げ銭・広告収益分配の停止、2023年の有料オリジナル事業終了、2024年のアプリサービス終了に続く段階的な縮小の最終局面といえる。Kakaoは終了の背景として、事業効率の改善と中長期の競争力強化を挙げた。
差別化できる利用者層やキラーコンテンツを十分に確保できない中で、幅広いコンテンツを並列的に提供する戦略は、YouTubeなどとの競争で構造的に不利だったとの判断を示している。
Kakao Gamesも、Daumプラットフォームで提供してきたPCゲームのチャネリングサービスを終了する方針だ。対象は「Lost Saga」「Final Fantasy 14」「Audition」など。
業界では、KakaoがAIスタートアップのUpstageとDaum買収に関する協約を締結して以降、利用率の低い事業や規模の小さい事業を中心に整理を本格化させているとみている。Daum発のサービスを段階的に縮小し、中核プラットフォームをKakaoTalk中心に再編する動きが加速しているという。
◆AI活用を本格化、焦点は収益化
Naverの次の一手は比較的明確だ。Cue:で蓄積した生成AI検索の技術は、すでに「AIブリーフィング」として検索サービスに組み込まれ、幅広い利用者に提供されている。2026年上半期には、対話型検索を高度化した「AIタブ」を投入する計画だ。
EC分野でも「ショッピングAIエージェント」のベータ版を公開し、購買転換率の向上を狙う。利用者が商品を検索すると、AIが情報を要約し、推薦まで行う仕組みだ。
Naverは、検索やショッピングなど全サービスにAIを組み込み、利用者全体がメリットを得られる環境づくりに注力する方針を示している。Cue:で検証したバーティカル検索の体験をAIブリーフィングとAIタブに移し、検索とコマースの転換率改善につなげる考えだ。
Kakaoの方向性も明確だ。KakaoTVの終了は単なる撤退ではなく、動画視聴の変化に対応した再配置の意味合いが強い。Kakaoは2025年9月、KakaoTalkのインターフェース改編に合わせ、友だちリストとチャットタブに並ぶ「3つ目のタブ」としてショートフォームサービスを配置した。
長尺中心の独立動画プラットフォームではなく、KakaoTalkという大規模なトラフィック基盤の中で短尺動画の視聴導線をつくる構造を選んだ形だ。Kakaoは参加クリエイターを拡大し、支援・補償体系を強化することで、ショートフォームのエコシステムを育成する計画を示している。
AIの収益化もKakaoTalk内で進める。2025年にOpenAIとの協業で投入した「ChatGPT for Kakao」は800万人の利用者を確保し、2026年にはGoogleと連携したオンデバイスAIの協業を始める。自社の軽量AIモデル「Kanana in KakaoTalk」を起点に展開する方針だ。
動画消費とAIサービスの両方を、個別プラットフォームではなくKakaoTalkの中で結び付ける方向へ軸足を移している。BNK投資証券アナリストは「今後のAIによる業績寄与は、パートナーエコシステムが十分に確保され、意味のある取引量がKakaoTalk内に流入する段階で見えてくる」との見方を示した。
両社の戦略は同じ方向に収れんしつつある。NaverはAIを検索とショッピングの正式機能として定着させ、Kakaoは動画とAI戦略の中心をKakaoTalkに集約する。
汎用AIプラットフォームや独立コンテンツサービスでグローバル大手と正面から競うよりも、自社が強みを持つプラットフォーム内で実利用と収益化を高める現実路線を選んだともいえる。今回のサービス終了で問われているのは、何をたたむかではなく、何に再び経営資源を集中させるかだ。
業界関係者は「NaverとKakaoはいずれも、独立サービスで新市場を切り開く段階は終わったと判断したようだ」とした上で、「今後は最も多くの利用者が集まるプラットフォームで、どれだけ早く収益化モデルを確立できるかが競争力を左右する」と話した。