画像はミケランジェロがシスティーナ礼拝堂の天井画を描く様子をイメージしたAI生成画像(提供=KAIST)

KAISTは3月12日、キム・ヒョンス教授が率いる機械工学科の研究チームが、天井面のような上向き面に形成された液体膜が重力で崩れる「レイリー・テイラー不安定性」を、少量の揮発性液体を用いて抑制する原理を明らかにしたと発表した。揮発性成分の蒸発で生じる表面張力差、いわゆるマランゴニ効果を利用し、液体膜を安定化できることを実験と理論の両面から示した。

この成果は、精密コーティングや電子回路の印刷、積層造形などで、より薄く均一な液体膜を形成する技術につながる可能性がある。傾斜面での安定塗布や、宇宙環境における流体制御への応用も見込む。

研究チームによると、天井に塗料を塗ると、いったんは薄い液体膜が形成されるものの、時間の経過とともに不安定化し、やがて滴となって落下する。浴室の天井に結露した水が水滴となって落ちたり、冷蔵庫内の天面に生じた水滴が大きくなって落下したりする現象も、同じ仕組みで説明できるという。

こうした、上向き面にある液体が重力によって崩れる現象は「レイリー・テイラー不安定性」と呼ばれる。従来は、重力が存在する限り避けにくい自然現象とみなされてきた。

研究チームは、天井側に保持された液体膜に少量の揮発性液体を混合する手法を提案した。揮発性成分が蒸発すると、液体表面の濃度分布が変化し、表面張力に差が生じる。表面張力は液体表面を内側に引き締める力で、水滴が丸い形を保つ要因でもある。

表面張力に差が生じると、表面張力の高い領域から低い領域へ向かう表面流が発生する。これがマランゴニ効果だ。研究チームは、この表面流が下方へ移動しようとする液体を引き留め、重力による不安定化を抑えることを確認した。

身近な例としては、水面にこしょうをまいた状態で中央に洗剤を1滴落とすと、こしょうが一気に周縁へ広がる現象が挙げられる。洗剤が触れた部分では表面張力が周囲より低下し、表面に沿った流れが生じるためだ。今回の研究では、揮発性液体の蒸発によって同様の表面張力差を生み出し、液体を押し広げるのではなく、上方へ引き上げる向きに作用させた。

実験では、特定の条件下で液体膜が重力下でも安定して維持されることを確認した。条件によっては、液滴が落下せず、液体膜が周期的に振動する新たな挙動も観測された。研究チームは、外部からエネルギーを加えず、液体の組成と蒸発という自然過程だけで重力不安定性を制御できる可能性を示したとしている。

研究成果は、ミケランジェロがシスティーナ礼拝堂の天井に「天地創造」を描いた際に苦しめられたとされる、頭上から落ちる絵の具のような現象の抑制にもつながる可能性がある。研究チームは、こうした原理が工業用途だけでなく、上向き面の液体制御全般に応用できるとみている。

キム・ヒョンス教授は「液体の組成と蒸発という自然過程を活用し、外部エネルギーなしで重力不安定性を効果的に制御できることを示した点に意義がある」とコメント。「この原理は、コーティングや印刷、積層工程に加え、宇宙環境での流体制御技術にも拡張できる」と述べた。

研究には、機械工学科の修士・博士一貫課程のチェ・ミヌ氏が筆頭著者として参加した。論文は1月29日、国際学術誌「Advanced Science」にオンライン掲載され、フロントピースにも選定された。研究は、韓国研究財団の個人基礎研究・中堅研究事業と、KAIST Upプログラムの支援を受けて実施した。

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