Meta Ray-Ban Display 写真=Meta

AI時代の到来と6Gへの移行を見据え、スマートグラスが次世代のコンピューティング端末として注目を集めている。スマートフォンに続く新たな個人向けプラットフォームになるとの期待がある一方、AR表示や電力効率、認識精度、セキュリティーなど実用化に向けた課題も残る。

スマートグラスは、眼鏡型のウェアラブル端末にディスプレイ、カメラ、各種センサー、通信機能を組み込んだデバイスだ。装着したまま視界にデジタル情報を重ねて表示できるほか、相手の発話をリアルタイムで翻訳して表示するなど、AIと組み合わせた多様な使い方が想定されている。

とりわけ期待が大きいのは、工場など危険を伴う産業現場での活用だ。作業者は両手を使ったまま必要な情報を確認でき、現場の映像や状況をその場で管理者に共有できる。屋根上など高所での作業や、手を離せない環境での支援にも適しており、現場作業の効率化や安全性向上につながるとみられている。

一般消費者向けでも用途は広い。見知らぬ場所で地図を視界に表示して案内を受けたり、外国語のメニューをその場で翻訳したりと、視覚情報をAIで補完しながら活用できるためだ。このため、スマートグラスをスマートフォンに続く新たなパーソナルコンピューティング基盤と位置付ける見方も出ている。

市場予測も強気だ。調査会社Smart Analytics Global(SAG)は、2026年の世界のスマートグラス売上高が前年の12億ドルから56億ドルへ拡大すると予測している。販売台数も前年の約600万台から2026年には2000万台に増え、2030年には7500万台に達する見通しだ。

企業各社の動きも活発になっている。現時点ではMetaが「Meta Ray-Ban」シリーズで先行する。中国のAlibabaは「Qwen Glass」を披露した。Appleも類似製品を開発しているとされ、Googleは年内にAI搭載のスマートグラスを投入すると伝えられている。Samsung Electronicsも年内にスマートグラスを披露する予定だ。

通信業界がスマートグラスに強い関心を寄せる背景には、データトラフィック構造の変化がある。スマートフォンは動画視聴など受信中心で、トラフィックはダウンリンクに偏りやすい。一方、スマートグラスはカメラやセンサーで取得した情報をリアルタイムで送信するため、アップリンクの比重が大きく高まる。

例えば、利用者が見ている映像をAIで解析するには、大容量データを継続的にクラウドへ送る必要がある。こうした需要に対応する基盤として期待されているのが6Gだ。超高速通信と超低遅延を生かし、スマートグラスの普及を後押しする可能性がある。逆に、スマートグラスの普及が進めば6G需要の拡大にもつながる構図だ。

通信機器関連企業もすでに対応を急いでいる。Qualcommの最高経営責任者(CEO)であるクリスティアーノ・アモン氏はMWC26で、「5Gがダウンロード速度の向上に重点を置いたのなら、6Gは『見るAI』に向けてアップリンクを最大化すべきだ」と述べた。

もっとも、急速な普及にはなお技術的な壁がある。最大の課題はARディスプレイ技術と端末性能だ。現状ではスマートフォンアプリや外部機器の演算能力に依存するケースが多く、スタンドアロン端末としての完成度は十分とは言い難い。眼鏡という小型筐体にバッテリー、センサー、通信モジュールを収める必要があり、省電力化や発熱対策も避けて通れない。

AI機能の安定性も課題として残る。リアルタイムの命令認識や物体認識は、なお高い精度が求められる段階にある。MetaはMWCで、筋電信号で機器を操作する「Neural Band」と組み合わせたMeta Ray-Ban Displayを披露したが、利用者の命令を完全に認識できる水準には至っていなかった。産業用途では特に高い精度と安定性が必要になるため、市場では依然として初期段階との見方が多い。不正撮影や個人情報流出といったセキュリティー面の懸念も解消が必要だ。

それでも業界では、スマートグラスがAI時代の主要インターフェースになる可能性は高いとみている。スマートフォンが手に持って操作する端末だったのに対し、スマートグラスは視界そのものを情報処理の入り口に変えることができるためだ。

AIと6Gが交差する領域で、スマートグラスは新たなデジタルプラットフォームとして定着する可能性を秘める。現時点では制約も多いが、世界の大手企業が相次いで参入している以上、関連エコシステムを巡る競争は今後さらに激しくなりそうだ。

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