米国でデジタル資産の包括的な規制整備を目指す「CLARITY法案」を巡り、アンジェラ・オルスブルックス米上院議員は、銀行と暗号資産業界の双方が完全には納得しない内容になるとの見方を示した。規制の不透明感解消が狙いだが、ステーブルコインを中心に利害調整の難しさが改めて浮き彫りになっている。
ブロックチェーンメディアのCryptopolitanが10日(現地時間)に報じたところによると、メリーランド州選出のオルスブルックス氏は、ワシントンで開かれた米銀行協会(ABA)のサミットで、CLARITY法案について「誰もが少しずつ不満を抱く内容になる」と述べた。規制の不確実性を抑える意義は大きい一方、銀行と暗号資産業界の双方の利害を調整する必要があり、どちらか一方だけを満足させるのは難しいとの認識を示した。
CLARITY法案は、デジタル資産を巡る規制の混乱を抑えるため、米証券取引委員会(SEC)と米商品先物取引委員会(CFTC)の連携強化を柱に据える。米国では、デジタル資産が証券に当たるのか商品に当たるのかを巡って解釈が分かれ、企業が重複規制や法的不確実性に直面してきた。
銀行業界が特に警戒しているのは、預金がステーブルコインやデジタル資産に流れることだ。オルスブルックス氏は、利用者が従来の預金口座ではなくデジタル資産へ資金を移しやすくなれば、既存の銀行システムから大規模な資金流出が起こり得ると説明した。
一部の試算では、2028年までに約5000億ドル(約7兆5000億円)が既存の銀行システムから流出する可能性があるとされる。このため銀行業界は、暗号資産プラットフォームがステーブルコイン保有者に利息や保有報酬を支払えないようにする規制を求めてきた。
これに対し、暗号資産業界は、そうした規制が市場の競争力を損なうと反発している。オルスブルックス氏は折衷案として、決済サービスの利用や流動性の提供、特定アプリケーションの利用など、実際の活動に伴う報酬は認める余地があるとの考えを示した。
一方、SECとCFTCは、フロリダ州ボカラトンで開かれた「FIA International Derivatives Expo」で、デジタル資産産業の発展に向けた協力の枠組みを公表した。取り組みは「Project Crypto」の下で進められ、3本柱を掲げる。
第1の柱は、暗号資産の分類基準の整備だ。デジタル資産が証券なのか商品なのか、あるいは混合型なのかを明確にする基準を設け、企業と投資家が抱える不確実性を減らす狙いがある。
第2の柱は、新たなコンプライアンスモデルの導入だ。現状では一部の企業がSECとCFTCの双方のルールに対応しなければならない。新たな枠組みでは、重複する規制対応の負担を軽減する方針だ。
第3の柱は、データ収集の見直しだ。当局はこれまで、金融機関から過剰な情報を集めているとの批判を受けてきた。両機関は、サイバーセキュリティリスクを抑える観点から、市場システムのリスク管理に必要な中核データに収集対象を絞るとしている。
CFTCはこのほか、予測市場の規制整備も主要課題に位置付ける。予測市場は、選挙や経済指標など将来の事象の結果を対象とする市場を指す。
同委員会は、予測市場を巡って複数の州政府が起こしている訴訟に対応するため、連邦レベルでの規制権限を明確にする方策を検討している。あわせて、市場操作の防止と透明性の確保に向けた正式な規制の枠組みも整える方針だ。
業界では、CLARITY法案と規制当局の連携強化が、米国のデジタル資産規制の方向性を左右する重要な転機になると受け止められている。同時に、伝統的な金融機関と暗号資産業界の利害対立は、今後いっそう鮮明になる可能性がある。