Teslaの運転支援システム「Full Self-Driving(FSD)」を作動させていた車両が、踏切の遮断機に接触したとされる映像が公開され、安全性を巡る議論が再燃している。米道路交通安全局(NHTSA)がFSD関連事案の調査を進める中で起きたケースとして、関心が集まっている。
米EVメディアのElectrekが3月9日(現地時間)に報じた。8日には、米カリフォルニア州ウェスト・コビナ近郊で、Tesla Model 3がFSD作動中に下りていた踏切の遮断機に接触したとされる。時期的には、米道路交通安全局(NHTSA)がTeslaに対し、FSD関連の交通違反事案に関する資料提出を求めている局面と重なった。
SNS「Threads」に投稿されたドライブレコーダー映像では、車両は時速約37キロで走行。前方の遮断機に接近しても、減速や回避の動きは確認しにくい内容となっている。投稿者は衝突直前にブレーキを踏み、大事故は免れたとして、「FSDが今日、自分を殺しかけた」と投稿し、システムの危険性を訴えた。
今回の事案は、NHTSAが進めるFSD関連調査の対象領域とも重なる。NHTSAは2025年10月、衝突事故14件、負傷者23人を含む58件の事案を根拠に調査に着手した。対象はFSD搭載のTesla車約288万台。踏切での認識不良のほか、信号無視や対向車線への進入など、重大な交通違反につながりかねない事例も含まれるとしている。
調査の背景には、Teslaが「Full Self-Driving」の名称で機能を展開・訴求してきた一方、実際の安全性や機能水準との整合性に疑問があるとの批判もある。
踏切でのFSDの挙動を巡っては、今回が初めてではない。NBC Newsの調査では、SNS上で報告された関連事例は40件超に上るという。ペンシルベニア州では、FSD作動中の車両が線路内に進入し、列車と衝突する重大事故につながったケースもあったとされる。
こうした状況を受け、エド・マーキー、リチャード・ブルーメンソールの両上院議員は、踏切の安全問題について正式な調査を求める書簡をNHTSAに送付し、対応を促している。
NHTSAは各事案について、発生30秒前からの詳細データをTeslaに提出するよう求めている。対象には、当時のソフトウェアバージョン、運転者への警告の有無、人的被害の発生状況などが含まれる。
Teslaは、人手による確認が必要な案件が8000件を超え、資料の準備は容易ではないとの立場を示している。ただ、今回の提出要求は単なる事務手続きにとどまらず、今後の安全性評価や規制判断の重要な材料になる可能性がある。
さらに、今回の事故と同じソフトウェアが、オースティンでのロボタクシーサービスにも適用されている点も注目されている。事故関連データの提出結果は、商用運行車両の安全性評価や規制判断に直接影響する可能性があるためだ。
事故映像の拡散を受け、FSDを巡る利用者の見方も改めて割れている。FSDは運転者の継続的な監視を前提とするレベル2の運転支援システムであり、最終的な責任は運転者にあると指摘する声がある一方、遮断機のような明確な障害物も適切に認識できないシステムに「Full Self-Driving」との名称を用いるのは誤解を招くとの批判も出ている。
専門家の間では、今回の事案はFSDの限界を示すと同時に、自動運転関連技術に対する規制のあり方を改めて問うケースだとの見方が出ている。
Threadsには3月8日、ラウシー・リウが、ウェスト・コビナ近郊で「Full Self-Driving」モードで走行中のTesla Model 3のドライブレコーダー映像を投稿した。映像には、遮断機が下りた直後の踏切に車両が接近する様子が収められている。