写真=ジョエル・コム氏のWebサイトから

ソーシャルメディア上で「50代以降がAI時代に有利な理由」と題した投稿が注目を集めている。発信したのは、著者でメディア専門家のジョエル・コム氏だ。同氏は、AI時代に競争力を左右するのは新技術を素早く習得する力ではなく、経験に裏打ちされた判断力やパターン認識だと主張している。

ジョエル・コム氏はビジネス誌「Inc」への寄稿で、これまでの技術革新では、より速くコードを書き、アルゴリズムを扱い、新しいプラットフォームをいち早く学ぶ人が優位に立ってきたと指摘した。その上で、AIは「経験が本当の武器になる最初の技術の波かもしれない」と強調した。

同氏は、AIを使いこなす上で重要なのは技術力そのものではなく、問いの質だとみる。プログラミング言語を習得するよりも、よりよい問いを立てられるかどうかが重要で、その土台になるのが判断力だという。

さらに、AI活用の本質はプロンプトを速く打ち込むことではなく、何が重要で何が重要でないのか、どのような結果が起こり得るのかを見極める力にあるとした。こうした力はパターン認識に支えられており、それは長年の経験の中で培われるものだと述べた。

同氏によれば、AIの時代に重要なのは技術そのものより思考力だ。AIを巡ってはスピードばかりが過大評価されがちだが、実際に差を生むのは判断力だという。

ジョエル・コム氏は、AIに「すごいアプリを作ってほしい」と丸投げするのではなく、事業アイデアの検証やローンチ計画の穴の洗い出し、前提条件の見直し、既存モデルの具体化に活用していると説明した。AIの出力もそのまま受け入れるのではなく、反論し、磨き込み、検証する対象として扱うという。こうした姿勢はYouTubeのチュートリアルで身に付くものではなく、代償の大きい失敗を重ねる中で蓄積されるものだと語った。

また、技術に詳しくないことを理由に尻込みする必要はないとの考えも示した。ツールの存在を知っていることと、それを適切に使いこなすことは別だとし、流通の仕組みを理解していればAIでメッセージをより鋭く磨ける、顧客心理を把握していれば反論をより素早く見つけられる、業務プロセスを理解していれば長年放置されてきた非効率を可視化できると述べた。

その上で、AI起業家になる必要はなく、既存の仕事をより精密に進められればよいと指摘した。

さらに同氏は、技術の波は常に同じ流れをたどると説明した。すなわち、熱狂、過信、調整、統合という過程だ。ただ、AIで異なるのはアクセシビリティの高さにある。話しかければ答えが返ってくるほど参入障壁が低いため、差別化の要因になるのはスピードでも年齢でもなく、判断力だと改めて強調した。

続けて、これからの時代を導くのはAIネイティブのスタートアップを立ち上げる22歳だけではないとした。すでに熟知しているシステムにAIを静かに、賢く溶け込ませる経験豊富な人材もまた、変化をけん引すると指摘した。ツールが簡単になるほど、経験の価値は一段と高まるという。

一方で、AIに思考そのものを委ねるリスクにも警鐘を鳴らした。リーダーがAIを戦略パートナーではなく、戦略を自動生成する装置として扱い始めれば問題が生じるとし、AIはパターンを予測できても責任は負わず、組織内の力学や評判毀損の重み、どのリスクが致命的かまでは判断できないと述べた。

AIが示せるのはあくまで可能性であり、最終的に決めるのは人間だ。長く事業に携わってきた人ほど、この違いを本能的に理解している。ジョエル・コム氏は、その本能こそが今の時代で一段と重要になっていると締めくくった。

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