6Gへの移行を巡る議論が、装置ベンダー主導で活発化している。MWC26では商用化時期にまで踏み込んだ発信が相次いだが、通信事業者側は必要性を認めつつも投資判断には慎重で、両者の温度差が鮮明になっている。
業界によると、スペイン・バルセロナでこのほど閉幕した「Mobile World Congress 2026(MWC26)」では、グローバルの通信機器ベンダー各社が6G時代を見据えた戦略を打ち出した。各社は、AIと通信の融合が進む中で、6Gが次世代ネットワークの中核を担うとの見方でおおむね一致している。
AIと通信を一体化した「AIネイティブネットワーク」の実現にも、6Gは欠かせないというのがベンダー側の主張だ。
商用化の時期についても具体的な見方が示された。Qualcommの最高経営責任者(CEO)、クリスティアーノ・アモン氏は基調講演で、2029年の6G商用化に言及した。
QualcommはMWC26で、6Gの開発とグローバル展開に向け、主要企業と戦略的な協業体制を立ち上げた。Ericssonも展示ブースで、既存の5G周波数を活用して6Gサービスを実現する多重無線システム周波数共有(MRSS)技術を紹介しており、6Gを先取りする動きが目立った。
一方、通信事業者側はベンダーほど前のめりではない。6Gの必要性そのものは認めるものの、投資の時期やスピードについては慎重な姿勢を崩していない。
国内通信事業者を含む主要な通信事業者はMWC26でも、6Gへの早期の投資拡大には慎重な見方を示した。国際標準がまだ固まっておらず、具体的な活用事例も見えていない段階で、大規模投資に踏み切るのは時期尚早との判断だ。
SK Telecomの最高技術責任者(CTO)、チョン・ソックン氏もMWC26の現地インタビューで、「まだ6G技術は研究開発段階だと理解している」と述べた。そのうえで、「ユースケースを見つける必要がある。技術面でも事業面でも検証すべき点がある」と語り、6G移行の加速論には距離を置いた。
慎重論の背景には、5Gを巡る過去の投資経験がある。LTEから5Gへの移行局面で通信事業者は巨額の設備投資を行ったものの、期待した水準の収益を確保できなかったとの見方は根強い。
特に5Gについては、設備構築コストに見合うだけの明確な増収効果や新サービス拡大が限定的だったとの分析がある。
加えて、5Gスタンドアロン(SA)の整備がなお途上にあることも負担材料となっている。科学技術情報通信部は、3G・LTE周波数の計370MHz幅の再割り当て条件として、5G SAへの転換を求めている。
こうしたコスト負担が続く中では、6Gへの移行は後回しになりやすいというのが業界の大勢だ。
通信業界関係者は「5G投資もまだ回収できていないのに、再び6G投資に踏み切るのは負担が大きい」と指摘する。「装置ベンダーには新市場が必要だろうが、通信会社は投資対効果を先に考えざるを得ない」と話した。
もう一つの変数は、技術標準化の行方だ。現在、6Gは第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)などを中心に標準化の議論が進んでいるが、完全な標準仕様はまだ固まっていない。
標準が定まらない段階で、装置導入やネットワーク投資のロードマップを策定するのは早いとの見方が強い。
業界では、2030年前後まで6Gを巡る装置ベンダーと通信事業者の温度差が続く可能性が大きいとみられている。装置ベンダーは技術開発と市場先取りを狙って6G移行を積極的に訴える一方、通信事業者は投資タイミングを慎重に見極める構図だ。
別の業界関係者は「今年のMWC26は、6Gを巡る議論が本格的に始まったという点で意味がある」としたうえで、「今後数年は技術論と並行して、投資時期を巡る業界の悩みも続くだろう」との見方を示した。