韓国の電池業界で、2027年の全固体電池量産を見据えた動きが加速している。セルメーカーから素材各社までバリューチェーン全体で研究開発が活発化しており、1000Wh/L級の高エネルギー密度を実現する次世代電池として、ヒューマノイドやドローン分野の有力技術と目されている。
業界によると、「InterBattery 2026」ではSamsung SDI、LG Energy Solution、SK Onのセル大手3社に加え、EcoPro、L&F、POSCO Future M、LG Chemなどの素材メーカーも、全固体電池の開発状況を相次いで公開する。ヒューマノイドロボットやドローン、航空・衛星向けで求められる高エネルギー密度かつ高安全性の電池を巡り、開発競争が本格化している。
全固体電池が注目を集めるのは、エネルギー密度と安全性を両立できるためだ。液体電解質を固体に置き換えることで、火災リスクを大幅に抑えながら、1000Wh/L級のエネルギー密度を実現できるとされる。
ヒューマノイドでは長時間稼働と小型・軽量化が不可欠で、ドローンでは飛行時間の延長と安全性の確保が重要になる。一方、現行のリチウムイオン電池のエネルギー密度は300~400Wh/L程度にとどまる。
ヒューマノイドロボットの稼働時間は、現状では2~4時間程度にとどまる例が多い。電池容量が一般に2kWh未満と小さいためだ。
例えば、Unitree H1は0.864kWhの電池を搭載し、静的動作でも稼働時間は4時間未満にとどまる。Tesla Optimus Gen2は2.3kWhのハイニッケル電池システムを採用するが、動的動作時の駆動時間は約2時間とされる。
市場調査会社TrendForceは、「5~8時間という駆動時間の限界を超えるには、バッテリー交換戦略や高エネルギー密度電池技術の導入が不可欠だ」と分析した。
市場の期待は大きい。ヒューマノイドロボット向け全固体電池の需要は、2035年に74GWhへ達する見通しで、2026年比では1000倍超の拡大になるという。
世界のヒューマノイドロボット出荷台数は、2026年に5万台を超える見通しだ。前年比700%超の成長が予想されており、TrendForceは「ヒューマノイドロボットの2026年の商用化が次世代電池需要を大きく押し上げる。とりわけ全固体電池が中核的な役割を担う」とみている。
2027年量産の成否が主導権を左右
Samsung SDIは、2027年下期の量産を目標に、硫化物系全固体電池の開発を進めている。1000Wh/L級のエネルギー密度を前面に、ヒューマノイドやモビリティロボット、産業用ロボットなど、さまざまなフィジカルAI分野への適用を計画する。
同社は、高性能演算と精密駆動を同時に求められるフィジカルAIでは、高いエネルギー密度、安定した出力、そして絶対的な安全性が必要になるとして、全固体電池を有力な解決策に位置付けている。
LG Energy Solutionは、全固体電池のほか、リチウムメタル電池、バイポーラ電池、ナトリウム電池など、次世代電池技術のポートフォリオを提示する。展示では、家庭用ロボット「LG Cloi」、Bear Roboticsの自律走行ロボット「Carti100」、K-Drone Allianceと連携した血液輸送用ドローン、航空・キューブ衛星向けに適用される全固体電池技術を紹介する予定だ。
全固体電池の商用化に向けた素材開発も本格化している。EcoProは、全固体電池材料のフルバリューチェーンを構築したと明らかにした。顧客企業とともに2027年量産を目標に開発を進める固体電解質に加え、全固体向け正極材、リチウムメタル負極材をInterBatteryで公開する計画だ。
EcoProの関係者は「世界最高水準のハイニッケル技術を基盤に、ヒューマノイド時代を見据えた全固体材料までフルラインアップで展示する」と説明した。
L&Fは、ASSB(全固体電池用)正極材を含む次世代材料ポートフォリオを公開する。POSCO Future Mは、全固体電池用正極材とシリコン負極材の開発状況を展示するほか、米全固体電池企業Factorial Inc.との共同研究開発の取り組みも紹介する。
POSCOグループは、固体電解質やリチウムメタル負極材など、全固体電池の中核材料の開発にも取り組んでいる。
LG Chemは、ハイニッケル、高電圧ミッドニッケル、LFP、LMRなど多様な正極材に加え、ASSB用正極材や負極バインダーなど、電池バリューチェーン全体をカバーするポートフォリオを披露する。LG ChemのCEOであるキム・ドンチュン社長は、「中核材料の競争力と技術に基づく統合ソリューションで、グローバル市場でのリーダーシップを強化していく」と述べた。
業界では、2027年を全固体電池商用化の分水嶺とみている。この時期までに量産体制を構築した企業が、ヒューマノイドやドローンといった次世代市場を先行して取り込むとの見方が強い。
今後の焦点は、量産工程の安定化とコスト競争力をいつ確立できるかだ。中国のCATLや日本のトヨタなど、世界の競合各社も全固体電池の開発を積極的に進めており、技術優位を維持できるかが重要になる。
業界関係者は「全固体電池は技術的なハードルが高く、セルメーカーと素材企業の緊密な協業が欠かせない。2027年の量産の成否が、韓国電池業界の次世代市場での主導権を左右する」と話した。