写真=Reve AI

CircleとStripeが、AIエージェントによる自律的な取引を支えるステーブルコイン決済基盤の整備を急いでいる。人手を介さずソフトウェア同士が代金を支払うM2M決済の広がりを見据え、従来のクレジットカード網に依存しない仕組みづくりが動き始めた。

Bloombergの報道によると、両社は自律型コマースの普及をにらみ、ステーブルコインを活用した決済インフラの開発を進めている。狙いは、AIエージェントが従来のカードネットワークを介さずに取引できる環境を整えることにある。

Circleは、自律型AIエージェント向けの決済インフラに注力している。ステーブルコイン決済に特化した独自ブロックチェーン「Arc」を打ち出したほか、AIエージェントが残高を保有し、複数のネットワークをまたいで取引できるナノペイメントの試験も進めている。

同社によれば、1件当たりの取引コストは1セントを大きく下回る水準で、高頻度のM2Mコマースを経済的に成立させやすいという。

一方のStripeは、2025年のBridge買収を含め、ステーブルコイン関連インフラに11億ドル超(約1650億円)を投じた。暗号資産分野のベンチャー投資会社Paradigmと連携し、ステーブルコイン決済に特化したブロックチェーンプロジェクト「Tempo」も立ち上げている。

さらにStripeは、Ethereumのレイヤー2「Base」上で、CircleのUSDC決済を支援する「x402」プロトコルを統合した。

x402は、Coinbaseとクラウドセキュリティ企業Cloudflareが示した仕組みで、HTTPの402ステータスコードを活用するインターネット向け決済規格とされる。アカウント登録やAPIキーなしで、AIエージェントがステーブルコイン決済を実行できるようにするのが特徴だ。

両社はともにAIエージェント決済の拡大を目指しているが、アプローチは異なる。Circleは決済・清算レイヤーとナノペイメント機能を重視し、Stripeは加盟店側への組み込みとブロックチェーン決済インフラの整備を進めている。

背景にあるのは、AIエージェントが担う少額・高頻度の取引では、既存のカードネットワークが必ずしも適さないとの問題意識だ。Blockonomyによると、従来のカード網は取引ごとの固定手数料に加え、決済額に応じた数%の手数料がかかるため、ソフトウェアエージェントがAPI呼び出しやデータ要求に数セントずつ支払うような用途にはなじみにくいという。

CircleのCEO、ジェレミー・アレア氏は、2月末の決算発表後のカンファレンスコールで、AIエージェント同士が互いのサービスを大規模に利用する将来像に言及した。

例えば、法務分野に特化したエージェントが外部エージェントから1日数千件のリクエストを処理し、その対価が1件当たり数セントにとどまるようなケースでは、クレジットカード網をそのまま当てはめるのは難しいという認識を示した。

Benchmark-StoneXのアナリスト、マーク・パルマー氏も、マイクロペイメントはコスト、レイテンシー、プログラマビリティの面で従来の決済インフラとは整合しにくいと指摘する。ソフトウェアのワークフローに直接組み込めるステーブルコインは、清算の遅れやカード決済のコスト構造といった課題を和らげる可能性があるという。

もっとも、現時点でステーブルコインを使ったAIエージェント決済の市場規模は5000万ドル(約75億円)程度にとどまる。年間46兆ドルに達するステーブルコイン取引全体と比べても、なお限定的な市場だ。

世界の電子商取引市場は、2026年に6兆8800億ドル(約1032兆円)に達する見通しで、規模の差は大きい。ジェレミー・アレア氏も、エージェント主体の取引がいつ一定規模に成長するかは不透明だとの見方を示している。

課題は加盟店の受け入れにもある。実際の決済体験を左右する加盟店が、ステーブルコイン決済をどこまで導入するかはなお不透明で、足元では追い風が強いとは言いにくい。

BWG Globalのクリス・ドナト氏は、「加盟店は消費者需要に従う。多くの消費者が望まない限り、新たな決済手段を積極的に受け入れる動機は乏しい」としたうえで、「現時点で消費者は、意味のある規模でステーブルコイン決済を求めているわけではない」と話している。

加えて、ステーブルコイン取引には、カード決済が備える不正防止や紛争解決、決済額を立て替える与信機能といった仕組みがない。短期的には、AIエージェントがバーチャルカードを使い、裏側の決済処理をステーブルコイン基盤で賄う方式が現実的な解として浮上している。この場合、ステーブルコインとクレジットカード網は競合一辺倒ではなく、当面は共存する可能性が高い。

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