OpenAIとプリンストン高等研究所の研究チームは、AIを活用した量子重力理論の解析で新たな数学的知見を得たと発表した。重力子の散乱振幅を調べた結果、従来はゼロとされてきた構造について、特定の条件下では分布として記述できる可能性を示した。論文はオープンアクセスの論文プレプリントサーバー「arXiv」で公開している。
5日付のGigazineによると、研究にはOpenAIの最新モデル「GPT-5.2 Pro」を用いた。研究チームは、AIが提示したアプローチが新しい数学的構造の発見につながったと説明している。
解析の対象となったのは、重力相互作用を媒介する仮説上の粒子「重力子」の散乱振幅だ。特に、1粒子のみが負のヘリシティを取り、残りが正のヘリシティとなる「シングルマイナス振幅」に焦点を当てた。ヘリシティは、粒子のスピンの向きと運動方向の関係を表す物理量で、相互作用の性質を左右する要素とされる。
これまでの理論では、最も基本的な相互作用段階であるツリーレベルにおいて、シングルマイナス振幅はゼロになると考えられてきた。これに対し研究チームは、粒子の運動量が「ハーフコリニア領域」と呼ぶ特定の配置条件を満たす場合、この振幅はゼロではなく、数学的には分布として扱えることを示した。従来の理解を見直す余地を示す結果といえる。
今回の研究では、AIの関与の仕方も注目される。研究チームは、すでに公表していたグルーオンに関する論文をGPT-5.2 Proに参照資料として与え、類似した数学的構造を量子重力理論に適用するよう求めた。その結果、AIは煩雑な計算を迅速に整理しただけでなく、新たな解法の形も提示したという。
研究チームは、GPT-5.2 Proが示した手法を「驚くほどエレガントな方法」と評価した。計算支援に加え、論文草稿の作成でも支援を受けたことを明らかにしている。
OpenAIは今回の成果について、AIが科学的発見のプロセスに実質的に寄与し得ることを示す事例だと強調した。研究チームによれば、実際に最も時間を要したのは仮説の着想そのものではなく、AIが導いた結果の検証や整合性の確認、論文としての取りまとめだったという。
今回の事例は、AIが発見の初期段階を大幅に加速する一方で、人間の研究者の役割が結果の検証と解釈へと比重を移しつつあることを示した形だ。