Kakao Mobilityの自動運転車両を視察した日本のCROSSTAXI代表団(写真=Kakao Mobility)

Kakao Mobilityは、配車システムや会計基準を巡る捜査案件で相次いで嫌疑なしの判断を受け、数年にわたって続いてきた司法リスクが後退した。これを受け、同社はプラットフォーム企業から自動運転を軸とするフィジカルAI企業への転換を一段と加速する構えだ。

ソウル南部地検はこのほど、公正取引委員会が告発したタクシー配車システム案件と、金融当局が通報した会計基準違反案件の計2件について、いずれも嫌疑なしと判断した。コール遮断を巡る案件は残るものの、主要な懸案は一段落した格好だ。

昨年5月の行政訴訟では、コール優先配分を巡る問題について裁判所がKakao Mobility側の主張を認めており、残るコール遮断案件についても、同社にとって大きな負担とならない可能性がある。

司法リスクの整理を受け、Kakao Mobilityは進めてきた事業構造の転換を本格化させる。タクシープラットフォームの運営で蓄積したデータと技術を、自動運転領域へ広げる戦略が柱となる。

同社は以前からフィジカルAIへの転換を準備してきた。産業通商資源部主導の「AI未来車 M.AXアライアンス」に参画し、AI自動運転分科の中核企業として開発を主導している。

狙うのは、韓国の道路環境に最適化した韓国型エンドツーエンド(E2E)自動運転の標準モデル構築だ。E2Eは、認知・判断・制御の各プロセスを単一のAIモデルに統合し、データ学習を通じて状況を推論する技術で、自動運転分野の有力なアプローチになりつつある。

中核資産となるのが、実証事業を通じて蓄積してきたデータだ。Kakao Mobilityは2020年に世宗で運用を始めて以降、板橋、江南、大邱、済州、ソウルなどで自動運転サービスを展開し、約3万km分の走行データを確保した。

データはLiDARやカメラセンサーなどのエッジインフラに加え、自社運用する自動運転車両から取得した。人、車両、自転車などの3D動的オブジェクトと、信号機や標識などの2D静的オブジェクトを対象に、10分類・15万件規模のデータセットを構築している。

Kakao TとKakao Naviで蓄積した移動データも強みだ。配車、管制、経路生成といったプラットフォーム運営のノウハウも含め、自動運転事業の競争力を支える基盤となる。

組織面でも再編に踏み切った。業界関係者によると、Kakao Mobilityは今月、既存の「未来移動開発室」と「未来事業室」を統合し、「フィジカルAI部門」を新設した。部門長には、副社長級として高麗大学コンピュータ学科教授のキム・ジンギュ氏を起用した。

企画と開発に分散していた未来モビリティ技術の機能を集約し、自動運転をはじめとする物理環境で動作するAI技術の商用化を加速する狙いがある。

キム部門長は社内の人事発令メッセージで、「Kakao Mobilityが築いてきた強固な現実基盤の上に、技術の高さを積み上げる」と述べ、技術企業への転換に意欲を示した。

さらに、「刻々と変化する道路の流れを読み解くデータ、複雑な現実の課題を解いてきた運用ノウハウ、顧客の安全を最優先してきたサービス運営力の3つは、グローバルBig Techでも容易に模倣できないKakao Mobility固有の資産だ」と強調した。

キム・ジンギュ氏は、高麗大学電気電子工学部で学士・修士課程を修了し、米カリフォルニア大学バークレー校でコンピュータサイエンスの博士号を取得した。その後、WaymoでE2E自動運転の中核プロジェクトに参加した経歴を持つ。

現在は高麗大学でVision & AI Labを率い、マルチモーダル表現学習、大規模自動運転向け機械学習、継続学習・生涯学習、ファウンデーションモデル、生成AIなどを研究している。

同研究室の研究テーマは、Kakao Mobilityの事業領域とも重なる。3Dオブジェクト検知、行動予測、占有予測といった自動運転の中核認知課題に加え、リアルタイム処理や効率化技術の開発も進めている。

複数視点カメラで重複領域の3Dオブジェクト検知精度を高める「ORA3D」、低解像度クエリを活用した3D占有予測の効率化技術、歩行者軌跡予測モデル「GUIDE-CoT」などの研究成果は、同社が蓄積してきた3D動的オブジェクトのデータセットと接点を持つ。

自動運転の商用化に向けては、ドメイン一般化の研究も重要になる。これは、特定の環境で学習したAIが別の環境でも性能を維持するための技術を指す。例えば、晴天のソウル都心で学習した自動運転AIを、雨天の済州沿岸道路でも安定して動作させるといった応用が想定される。

Vision & AI Labは、自己教師あり学習、対照学習、カリキュラム学習などを通じてドメインシフトの課題を克服し、環境変化に対応できるAIシステムの研究を進めている。世宗、板橋、江南、大邱、済州、ソウルといった多様な都市環境で実証を重ねてきたKakao Mobilityにとっても重要なテーマといえる。

このほか、人間の助言や説明を内在化した説明可能な自動運転AIや、シミュレーションベースのシナリオ検証など、実道路環境への適用を見据えた研究も進めている。

マルチモーダルAIの能力も、フィジカルAI事業拡大の基盤となる。Vision & AI Labは、画像、テキスト、音声といった複数のモダリティを統合的に理解・活用する技術を開発している。

こうした技術は、Kakao Mobilityが開発中の3Dレンダリング技術ともつながる。Googleの「Immersive View」のように、利用者が望む視点から空間を自由に見渡せる技術で、現在はオフィス、物体、駐車場などさまざまな環境でテストを進めているという。

Vision & AI Labは、WaymoやHyundai Motorなどの企業・研究機関との協業実績も持つ。

Kakao Mobilityの関係者は、「フィジカルAI部門の新設とAI中核人材の採用を通じ、グローバル企業と競争できる水準の技術競争力を確保し、未来モビリティ技術の商用化を加速したい」と述べた。

そのうえで、「今回迎えたキム・ジンギュ フィジカルAI部門長は、Waymoなどグローバル企業での実務経験と学界の専門性を兼ね備えた人材だ。自動運転とフィジカルAI分野の競争力確保に注力する」とした。

また、「今後も自社技術の開発に加え、業界との緊密な協力を続け、安全な自動運転エコシステムの構築に取り組む」としている。

キーワード

#Kakao Mobility #自動運転 #フィジカルAI #E2E #自動運転データ #組織再編
Copyright © DigitalToday. All rights reserved. Unauthorized reproduction and redistribution are prohibited.