Dassault Systemesは5日、設計者向け生成AIのラインアップを拡充し、既存のバーチャルコンパニオン「Aura」に加えて、新たに「Leo」「Marie」のプレビュー版を公開した。いずれも、より高度なエンジニアリング業務を支援するAIエージェントとして位置付ける。正式版は2026年上半期に提供する予定だ。
同社によると、Auraはアイデアの着想や探索を支援する生成AIだ。社内データとWeb上の外部知識を組み合わせ、設計アイデアの具体化を後押しする。
一方、Leoは製造性や設計の実現可能性を検証し、実際の製品化を見据えた設計案を提示する。Marieは科学的な分析を担い、落下試験や人間工学評価、医療機器の規制対応といった高難度の領域までカバーするという。
Dassault Systemesは、Aura、Leo、Marieがそれぞれ役割を分担するAIエージェントとして連携し、エンジニアリング分野の設計業務を大幅に効率化できるとしている。
年次カンファレンス「3DEXPERIENCE World 2026」の会場で、スチット・ジェイン氏(Dassault Systemes 3DEXPERIENCE Works 戦略・ビジネス開発担当副社長)に、設計分野におけるAI活用の方向性を聞いた。
――バーチャルコンパニオンは、一般的な大規模言語モデル(LLM)ベースのAIとは異なると強調している。Aura、Leo、Marieの開発で重視した点は。
ジェイン氏:Aura、Leo、Marieはいずれも、RAG(検索拡張生成)をベースにしている。物理法則や社内データを参照しながら回答や提案を行えるようにする仕組みだ。企業が保有する知識やノウハウを外部に流出させることなく、必要な情報をAIで見つけて活用できる。MCP(Model Context Protocol)を通じて、必要なツールを安全に呼び出せる環境の整備も進めている。
各エージェントは、作業の文脈に応じて呼び出される。エージェント同士が自律的に連携するエージェンティックAIの考え方も取り入れている。特定のタスクに対して、あらかじめ手順を細かく与えなくても、AIが自ら解決策を見つける方向だ。当社もそこを目指している。
――複数のエージェントが連携すると、誤りや衝突が起きる可能性もあるのではないか。
ジェイン氏:複数のエージェントを用意しているのは、あらゆる問題を1つのAIで解けるわけではないからだ。ビジネス課題を解決したい人、エンジニアリングシミュレーションを担う人、分子科学レベルの発見を必要とする研究者が、同じエージェントを使うべきではない。必要となる計算資源や作業の文脈も、業務ごとに異なる。そうした計算資源とコストを踏まえて、3つのエージェントを用意した。
当社のバーチャルコンパニオンは、進行中の作業に応じてエージェント間で協力することもできる。単一のプラットフォーム上で動くため、どのエージェントがどの作業に関わっているかを把握しやすく、衝突の問題も抑えられるとみている。
――利用者が必要に応じてAura、Leo、Marieを選ぶのか。それとも入力内容に応じて最適なコンパニオンへ自動的につながるのか。
ジェイン氏:利用者がニーズに応じて選べる形にする計画だ。モデル側で自動選択する方式は、コストが高くなる可能性がある。
――バーチャルコンパニオンの価格方針は。
ジェイン氏:ビジネスモデルはまだ検討中だ。ただし、既存のサブスクリプションに含まれる無料ティアは設ける。SOLIDWORKSでは現在のライセンスに、プラットフォームベースのクラウドサービスが含まれている。Auraはそのクラウドサービスの範囲内で提供する。他のコンパニオンについては、NVIDIAのGPU利用コストも踏まえ、別料金になる見通しだ。
――今回のカンファレンスでは、生成AIを軸にした設計戦略がこれまで以上に具体化した。利用者にはどのような影響があるか。
ジェイン氏:Leoが5分でモデルを生成し、シミュレーションまで終えるデモを見ると、仕事が置き換えられるのではないかという不安を抱く人もいるかもしれない。しかし当社は以前から、設計をなくすのではなく、より多くの人が設計に関われるようにすることを目指してきた。AIが設計という仕事そのものを代替するのではなく、設計者の力を引き上げる支援役になるべきだと考えている。
バーチャルコンパニオンが導入されても、分析担当者や設計者の仕事がなくなるわけではない。むしろ両者の生産性を高める。当社の哲学は、技術がコパイロットとして機能し、人がより多くの仕事をこなせるようにすることにある。今後、設計の仕事の一部は変わる可能性があるが、結果として新たな雇用も生まれるだろう。
――設計を学ぶ学生は、AIがもたらす変化にどう対応すべきか。
ジェイン氏:AIで3Dモデリングを行うといっても、単に「こういうものを設計してほしい」と指示するだけで済む話ではない。もちろん、それである程度のことはできる。しかし、それが最終的な解決策ではない。そのやり方だけでは、完全な設計にはなりにくい。エンジニアリング段階の細部は依然として重要で、説明を加えても、十分な機能を備えたモデルが出てこないこともある。だからこそ、バーチャルコンパニオンは仕事を代替するものではなく、生産性を高めるものだと強調している。
AI技術が進歩しても、エンジニアリング教育そのものが不要になるわけではない。AI時代であっても、基礎的な工学知識がなければ適切に仕事を進めることはできない。AIによって作業が容易になったとしても、理解し、観察し、正しい問いを立てる力は欠かせない。そのためにはノウハウが必要だ。エンジニアを目指す学生も同じで、物理学や科学の基礎は今後も重要であり、教え続けるべきだ。
――AI時代の製造業において、韓国をどうみているか。
ジェイン氏:韓国は製造を含む多くの分野で、すでに先行している。AIの活用も進んでいるように見える。仮に、「まったく知らない」「知っているがあまり使わない」「よく理解し、積極的に使っている」という段階があるとすれば、韓国はすでに活用が進んだ段階にある。当社のスタートアッププログラムにも、韓国のスタートアップが数多く参加している。