Oracle Cloud Infrastructure(OCI)の採用が、韓国AIスタートアップで広がっている。CryptoLab、Like a Lion、ToDigitの3社は「Oracle AIサミット2026」で導入事例を紹介し、高い拡張性やセキュリティ、保守性に加え、並列処理性能やネットワークコストの面で優位性があると評価した。
CryptoLab、同型暗号基盤でOCIを活用
同型暗号技術を手がけるCryptoLabは、OCIの強みとしてセキュリティ性能と並列処理性能を挙げた。CryptoLabプラットフォーム開発チームのチョン・ソンチョル理事は、「同型暗号では複雑な並列演算が必要になる。他社と比べてOCIは高い並列処理性能を引き出しやすく、必要に応じて柔軟にスケールできた」と説明した。
CryptoLabは、データを暗号化したまま利用できる同型暗号技術を開発している。最近では、元データを復号せずにベクトルベースの検索を実行できる「InVector」を公開した。機密データを外部にさらすことなく、AI検索を実現できるとしている。
チョン氏は、CPUコア数の拡張性やネットワークコストの面でもOCIに利点があったと述べた。「同型暗号の演算ではCPUベースの並列処理が重要になるが、OCIはARMインスタンスでもコアを増やしやすかった。月間10TBまで無料のアウトバウンドトラフィックが利用できる点も、スタートアップには大きな支えになった」と語った。
CryptoLabは現在、Tossや主要な国家機関などに同型暗号技術を提供している。同社は、同型暗号を産業セキュリティの中核インフラとして定着させることを目標に掲げている。
Like a Lion、教育分野でAIエージェントを運用
教育分野でもOCIの活用が進む。IT教育コミュニティを運営するLike a Lionは、自社開発の学習管理プラットフォーム「AI Learning Experience Platform」をOCI上で運用しており、複数のAIエージェントも同基盤で最適化して稼働させている。
同社が展開するAIエージェントには、授業に参加する学習パートナー役の「Leo」のほか、コンテンツ生成AI、1日の学習内容を自動で整理して要約ノートとして提供するエージェントなどがある。
こうした複数のAIエージェントを連携させるには、コンテナベースのマイクロサービスアーキテクチャが欠かせない。Like a Lionは、OCIがこうした環境の構築を迅速に支援し、ネットワーク遅延の計測など保守面でも強みを発揮したと説明した。
Like a Lionのクォン・オチョルCTOは、「教育サービスでは24時間の安定稼働が重要で、学習データは個人情報としても機微性が高い。OCIはネットワーク分離や権限制御といったセキュリティ機能を標準で備えており、安心して導入できた」と話した。
同社は大規模な広告キャンペーンでもOCIの安定性を確認した。俳優ペク・ヒョンジン氏が参加したイベントページに数十万人規模のアクセスが集中した際も、障害なく運営できたという。クォンCTOは「予測しにくいトラフィックにも柔軟に対応するうえで、OCIが大きな役割を果たした」と強調した。
ToDigit、米国展開を見据えて採用
LLMのファインチューニングを手がけるToDigitは、グローバル展開を視野にOCIを採用した。金融、国防、公共機関など、外部ネットワークへの接続が制限される環境でも利用できるドメイン特化型AIモデルを開発している。こうした技術力が評価され、科学技術情報通信部と中小ベンチャー企業部が主催したAIスタートアップLLMチャレンジで、「グローバル市場進出有望AIスタートアップ」に選ばれた。
同社は最近、米国株投資家向けのAIリポートサービスのベータ版を公開した。金融データ分析に特化したAIモデルを用い、約1万銘柄のリポートを1日2回自動生成するという。
ToDigitのパク・ソクジュン代表は、「インフラを韓国国内に置けば、米国ユーザーで遅延が発生するのは避けにくい。OCIは米国リージョンを現実的な条件で利用でき、現地向けサービスを迅速に準備できた」と説明した。
とりわけネットワークコストの削減効果が大きかったという。パク代表は「OCIはクラウドのネットワーク費用が低く、サービス全体の運用コストを抑えられた。今後はOracle Databaseとの連携も含めて検討している」と述べた。