画像=Nature

中国科学院金属研究所(IMR)を中心とする中国の研究チームが、チオシアン酸アンモニウム水溶液を用いた新たな冷却原理「溶解バロカロリック効果(Dissolution Barocaloric Effect)」を報告した。加圧と減圧に伴う溶解・沈殿反応を利用して熱を吸収・放出する仕組みで、データセンターやAI演算機器向け冷却技術への応用が期待される。研究成果は学術誌「Nature」に掲載された。

研究は、中国科学院金属研究所のほか、北京高圧科学研究センター、西安交通大学が共同で実施した。研究チームによると、チオシアン酸アンモニウム水溶液は加圧時に塩が沈殿して熱を放出し、減圧時には塩が急速に溶解して周囲の熱を吸収する。この可逆反応によって、短時間で大きな温度変化を生み出せるという。

室温での実験では、溶液温度が20秒で約20〜30度低下した。高温条件では、温度低下幅が最大で50度を超えたとしている。研究チームは、既存の固体カロリック材料を用いた冷却方式を上回る性能だと評価している。

冷却システムは、(1)加圧による加熱(2)外部への放熱(3)減圧による冷却(4)冷熱の移送――の4段階サイクルで動作する。1サイクル当たり最大67ジュールの熱を吸収でき、理論上のエネルギー効率は約77%に達するとしている。

冷凍・冷却分野では、19世紀から使われてきた蒸気圧縮方式が現在も主流だ。ただ、冷媒ガスの圧縮や気化に多くの電力を必要とし、温室効果ガス排出の課題も抱える。研究チームによると、中国では冷凍関連産業が国内総生産(GDP)の約2%を占める一方、電力消費の20%、二酸化炭素排出の7.8%を占めるという。

代替技術としては、固体の相転移を利用するカロリック冷却も注目されてきたが、熱伝導の制約から大規模・高出力用途では限界があった。これに対し研究チームは、今回の溶解バロカロリック効果が、低炭素排出、大容量冷却、高い熱交換効率という3つの課題を同時に解決し得るとみている。

研究は、中国国家自然科学基金と中国科学院のフロンティア科学重点研究プロジェクトの支援を受けた。実験には日本の放射光施設SPring-8も利用した。今後は、データセンター冷却やAI演算機器、産業用冷凍システムなどへの展開可能性を検討する。

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