米暗号資産市場構造法案「CLARITY Act」を巡り、投資銀行TD Cowenは、ドナルド・トランプ米大統領が直接関与しない限り、議会審議は前に進みにくいとの見方を示した。業界内の対立に加え、民主党の協力取り付けも難航要因になっている。
The Block Cryptoが2日(現地時間)に報じたところによると、TD Cowenのマネジングディレクター、ジャレット・サイバーグ氏は、暗号資産業界と銀行業界の利害対立がなお大きく、法案成立にはトランプ大統領による調整が不可欠だと指摘した。
サイバーグ氏は「トランプ大統領が暗号資産業界と銀行業界に妥協を促さない限り、法案が議会を通過する可能性は低い」との認識を示した。
報道によると同日、ホワイトハウスで暗号資産政策を担当するデービッド・サックス氏は、銀行業界や暗号資産業界、Coinbaseなどと会合を開き、市場構造法案を巡る妥協案を協議した。
主要な争点の一つは、上院銀行委員会で議論されているステーブルコインへの報酬付与だ。銀行側は、暗号資産プラットフォームが明確な制限なしに報酬を提供すれば、従来の銀行預金が流出しかねないと警戒している。
これに対し、一部の暗号資産企業は、銀行側が競争を制限しようとしていると反発している。こうした論点は、昨年7月に可決されたGENIUS法案の審議でもすでに扱われたとの立場だ。
TD Cowenは、ステーブルコインへの報酬付与そのものは避けられないとみる一方、導入時期や規制・監督の水準が今後の中核論点になると分析した。銀行にとっては、ステーブルコインが日常決済で広く使われる段階に至るまでは、預金獲得競争への脅威は限定的となる可能性がある半面、マネー・マーケット・ファンド(MMF)にとっては潜在的なリスク要因になり得るとしている。
法案成立に向けた最大の関門は、民主党の賛成確保だ。上院では可決に少なくとも10人の民主党議員の支持が必要との見方がある。民主党は、投資家保護の強化、マネーロンダリング対策、利益相反防止規定の整備を求めている。
なかでも、大統領や政府高官、その家族による暗号資産企業の保有・支配を制限する条項が大きな争点となっている。
TD Cowenは、業界内の合意形成と民主党の説得が進まなければ、法案審議の勢いが鈍る可能性があるとみている。サイバーグ氏は「2026年中の法案成立は不可能ではないが、業界が妥協点を見いだし、民主党の支持を確保できなければ、成立への道のりはさらに厳しくなる」と述べた。
今後の交渉では、ステーブルコインへの報酬付与の範囲、規制の強度、利益相反防止条項の扱いが引き続き焦点となる。加えて、ホワイトハウスと議会が投資家保護やマネーロンダリング対策をどの水準まで法案に盛り込むか、米証券取引委員会(SEC)と米商品先物取引委員会(CFTC)の役割分担をどう整理するかも、重要な分岐点になりそうだ。