写真=Dassault Systemesのパスカル・ダロズCEO

Dassault Systemesは、産業分野向けのフィジカルAI戦略を前面に打ち出した。現実世界の文脈を理解する「インダストリー・ワールド・モデル」と、それを基盤とする仮想コンパニオンを活用し、3D設計から解析、製造検証までを自然言語で支援する。パスカル・ダロズCEOは、高度な設計業務にも対応する新たな仮想コンパニオン「Leo」と「Marie」を2026年上半期に正式リリースする方針を明らかにした。

ダロズCEOは、「フィジカルAIが産業現場で実用化されるには、物理環境を認識するだけでは不十分だ。因果関係や推論、産業固有の文脈まで扱えなければならない」と述べた。大規模言語モデル(LLM)に続くAIの潮流として注目されるフィジカルAIについて、現実の文脈を踏まえた推論能力が不可欠との認識を示した形だ。

同氏は、2月1日から4日まで開催された年次カンファレンス「3DEXPERIENCE World 2026」の基調講演後の記者説明会で、インダストリー・ワールド・モデルについて「現実の認識と推論を統合する仕組み」と説明した。単なるチャットボットではなく、エンジニアや設計者、ビジネス部門をつなぐ仮想コンパニオンの実現につながるという。

3DEXPERIENCE Worldは、Dassault Systemesの3Dソリューション「SolidWorks」製品群のユーザーやパートナーを対象とした年次イベント。今回は約6,000人が参加し、ダロズCEOはインダストリー・ワールド・モデルと仮想コンパニオンが設計業務をどう変えるかを中心に説明した。

同社によると、仮想コンパニオンは従来型のAIチャットボットとは位置付けが異なる。設計プロセスと連携することで、自然言語によるモデリングに加え、エラー分析やシミュレーションまでを、ガバナンスを担保しながら支援できるとしている。

イベントでは、自然言語インタフェースを使って3Dモデリングを進めるデモも複数回披露した。これを支える製品群の拡充も進めている。

同社は2025年の3DEXPERIENCE Worldで、仮想コンパニオン「Aura」のベータ版を公開した。今回のイベントでは、新たに「Leo」と「Marie」のプレビュー版も披露し、2026年上半期に正式リリースする予定だ。

Auraが基本業務を支援するのに対し、LeoとMarieは3Dモデリングを含む、より高度なエンジニアリング業務を担う。Leoは構造、機械設計、シミュレーション、製造にまたがる物理ベースの解析を担当し、Marieは材料など、より科学的な領域をカバーする。

ダロズCEOは、Auraを戦略・ビジネス・コンプライアンス領域に特化したアドバイザー、Leoを製造可能性や構造妥当性を検証する実務型エンジニア、Marieを科学知識に基づいて設計段階の理論検証を支援する存在と位置付けた。仮想コンパニオンは単体ではなく、3つのAIが役割分担しながら知識ベースで協調する構成だという。

仮想コンパニオンの出力は、単純な命令処理にとどまらない。例えば「水タンクを支える鉄製フレームを設計して」と入力すると、数分で構造解析を含む全体モデルを生成できるという。反復的な操作や複雑な機能設定を極力減らし、対話を通じて高度なモデル作成を可能にする点を訴求した。

PDFや画像から直接3Dモデルを生成したり、既存サプライヤーのCADファイルをパラメトリックモデルへ自動変換したうえで必要に応じて修正したりすることも可能とする。エラー発生時にAIが原因を分析して対処を案内し、組み立て性能が低下した場合には原因と改善策を提示する「Assembly Doctor」機能も投入が近いとしている。

ダロズCEOは、必要に応じてユーザー側でAIを統制できる点を「信頼性における差別化要因」と強調した。図面の自動生成に対応しつつ、図面標準やビュー構成は利用者がカスタマイズできるという。

プロジェクト管理や変更承認などのエンタープライズ機能でも、自然言語による操作が可能な水準に達したと説明した。例えば「上司に承認を依頼して」といった指示にも対応できるとしている。LeoとMarieの投入により、統合ソリューションの提供をさらに進める考えだ。

ダロズCEOは、AIが産業設計にもたらす変化について、「AIは物理的制約を置き換えるのではなく、それを受け入れたうえで、知識やノウハウの活用をより速く、より良く、別の形で実現する」と述べた。これこそがバーチャルツインの本質だと位置付ける。

さらに、産業分野へのAI統合は「ジェネレーティブ・エコノミー」への移行を促す転換点になるとの見方も示した。30年前まではモノづくりそのものが中心だったが、現在は知識とノウハウを生み出す構造へ移りつつあり、AIはそれを増幅する手段になるという。製品はより「ソフトウェア定義」の対象となり、自動車、分子、システム、さらにはビジネスモデルまでソフトウェアで定義される方向に進んでいると述べた。

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