Naverは、国内向けの「Lounge」と北米向けの「Thingsbook」を相次いで投入し、ユーザー生成コンテンツ(UGC)戦略の立て直しを進めている。ショート動画やAI要約コンテンツが広がるなか、同社はテキストベースのコミュニティと記録型サービスを通じて、利用者の反応や嗜好データを改めて取り込む構えだ。上半期に公開予定の超個人化AI「AgentN」に向けたデータ基盤強化の一環とみられる。
Naverの成長を支えてきたブログやカフェなどの既存UGCは膨大なデータを蓄積している一方、最新トレンドや突発的な話題への即応という面では限界も指摘されてきた。このため同社は、利用環境や市場特性に応じてコミュニティの役割を分ける戦略に切り替えた。
「即時性」と「蓄積」を分ける2本柱
Naverは単一のコミュニティモデルに依存せず、サービスごとに役割を分担する。1月26日(現地時間)に北米でオープンベータを開始した「Thingsbook」は、個人の嗜好や経験を積み重ねるテキスト中心の蓄積型プラットフォームと位置付ける。一方、1月28日に国内で提供を始めた「Lounge」は、その時々の感情や反応を集める即時性の高いコミュニティとして展開する。
Loungeは追加の登録手続きなしで誰でも参加できる開放性を打ち出し、利用者の率直な声を集める設計とした。これに対しThingsbookは、テキスト中心のアーカイブ型サービスとして、利用者の関心や経験に関する深い文脈の蓄積を狙う。NaverはLoungeで足元の関心や反応を把握し、Thingsbookで利用者理解につながるデータを蓄えることで、時間軸の異なるUGCを幅広く確保する考えだ。
AgentNに必要な「正答」ではなく「文脈」のデータ
生成AIの普及によって、検索は「答えを提示するサービス」としての性格を強めている。Naverがあらためてコミュニティと記録型サービスに注力するのは、検索ログだけでは捉えきれない利用者の意図や背景を把握するためとみられる。
公開を控える「AgentN」は、単に質問に答えるだけでなく、文脈を理解したうえで次の行動を予測・提案する超個人化AIを掲げる。その実現には、単純な検索履歴ではなく、感情や嗜好、経験が結び付いたデータが欠かせないという。
この観点からLoungeは、利用者がその時点で何を気にし、どのような問いを投げかけているかを把握する接点となる。Thingsbookは、そうした関心がどこから生まれたのかを読み解くためのデータベースとして機能する位置付けだ。
業界関係者は「既存の検索エンジンが提供する定型的な情報だけでは、利用者ごとの文脈を十分に反映するのは難しい」と指摘する。そのうえで、「実体験や固有の視点が盛り込まれたUGCは、AgentNが複雑な意図を精緻に把握するうえで中核資産になり得る」との見方を示した。
国内は囲い込み、北米は英語圏UGCの確保へ
両サービスは市場ごとの役割分担も明確だ。Loungeは、国内利用者の滞在時間を伸ばし、Naverプラットフォーム内での囲い込みを図る狙いがある。放送・映画、スポーツなど8つのテーマ掲示板を軸に、サービス内での回遊を促す。
一方、Thingsbookは企画段階から北米市場を念頭に置いた。韓国型ブログをそのまま持ち込むのではなく、現地でなじみのあるテキスト型SNSに近い形式を採用した。英語圏のUGCを直接確保し、グローバルAI競争に向けて自社が活用できる独自データを積み上げる狙いがある。
Naverは、コンテンツの短期的な消費を追うよりも、利用者理解を深める方向へ軸足を移しつつある。LoungeとThingsbookは、AI時代にポータルとして利用者データを継続的に蓄積・活用するための中長期戦略といえそうだ。
別の関係者は「AI 2.0の時代には、データ量だけでなく質と文脈がより重要になる」と指摘。「Naverが国内外で同時にUGC領域を広げるのは、単なる新サービス投入ではなく、将来を見据えた生存戦略だ。利用者の経験や嗜好を含む高品質なデータをどれだけ早く自社AIモデルに取り込めるかが、今後のグローバル大手テックとの競争を左右する」と話した。