SpaceXは2日、AIスタートアップのxAIを買収し、統合会社を発足させたと正式に発表した。xAIに20億ドルを出資していたTeslaは今回の再編には加わらず、同社の出資分は統合会社を通じた間接保有に切り替わる。市場では、将来のIPO観測とともにTeslaへの影響に関心が集まっている。
電気自動車メディアのElectrekなどによると、Elon Musk氏は同日、SpaceXの公式サイトに「人類の未来を加速するため、xAIがSpaceXに加わる」とするメモを掲載した。取引は、評価額ベースで約1兆2500億ドル規模の統合会社を立ち上げる形で実施された。先月xAIに20億ドルを投じたTeslaは、買収スキームには含まれなかった。
Musk氏は投稿の中で、統合会社について「AI、ロケット、宇宙ベースのインターネットや携帯端末との直接通信、リアルタイム情報と言論の自由のプラットフォームを結び付ける、地球内外で最も野心的かつ垂直統合されたイノベーションエンジンだ」と説明した。
今回の再編は、約8000億ドルと評価されるSpaceXと、直近で2000億ドル超の企業価値が付いていたxAIを組み合わせるものだ。ウォール街では、統合会社が年内にも最大500億ドル規模のIPOに動く可能性があるとの見方も出ている。
Musk氏が描く長期構想は、宇宙空間の太陽光エネルギーを活用してAI計算を処理する「軌道データセンター」衛星網の構築だ。規模は最大100万基に達する可能性があるという。SpaceXは先週、米連邦通信委員会(FCC)に衛星打ち上げの許可を申請した。Musk氏は「2〜3年以内に、宇宙で最も低コストなAIコンピューティングの生産方式になる」と主張している。
市場の焦点は、この取引がTeslaにどのような影響を及ぼすかに移っている。Teslaの投資家の間では、xAIに投じた20億ドルの位置付けを巡る議論が強まっている。今回の再編により、この出資はSpaceXとxAIの統合会社に対する間接持分に転換される。結果としてTesla株主は、統合会社を通じてSpaceXの非上場持分を間接的に保有する構図となる。
当初はTeslaを含む3社統合の可能性も取り沙汰されたが、上場企業であるTeslaを未上場企業と一体化することに伴う法務面や構造面の複雑さから実現しなかった。これによりMusk氏の事業群は、SpaceX・xAI・Xから成る「宇宙、AI、ソーシャルメディア」と、Teslaの「自動車、エネルギー、ロボティクス」という二つの柱に、より明確に整理された。
今後の論点は、Musk氏の関心と経営資源がどちらにより厚く振り向けられるかだ。市場では、Teslaの資金がMusk氏の未上場企業群へ流れているとの懸念が出ている。TeslaはAI人材と技術の確保を名目にxAIへ巨額資金を投じた一方、SpaceXはすでに安定した収益基盤を持つ。これに対しxAIは、OpenAI、Google、Anthropicとの競争の中で多額の資金を消費している。
SpaceXとxAIの統合により、Musk氏はSpaceXの収益力を背景にxAIのAI開発を支えられるようになる。あわせて、将来のIPOを通じてxAI投資家に投資回収の道筋を示せる形にもなった。
一方で、利益相反を巡る議論はなお続いている。Tesla株主は、Musk氏が自身の関連企業を支援するためTeslaの資金を使ったとして、受託者責任違反を問う訴訟を起こしている。Musk氏はTesla株の約18%を保有するほか、SpaceX株の42%、議決権ベースでは79%を握り、xAIも支配している。企業間の資金移動が、構造的にMusk氏個人に有利に働く可能性を指摘する声もある。
Electrekは今回の取引について、「競争で後れを取ったソーシャルメディア・AI企業であるxAIを、Musk氏が救済した」と評価した。2016年にTeslaがSolarCityを買収して論争を招いた構図の再来だとみる向きもある。
またElectrekは、「宇宙ベースのAIが人類に実質的な利益をもたらすかどうかは、まだ検証されていない」とした上で、「明らかなのは、自動車販売の減少が2年連続となったTeslaのCEOが、Teslaと同じAI人材と資源を巡って競合する別の巨大企業も経営しているという事実だ」と指摘した。さらに、今回の判断は個人資金ではなく上場企業の資金を伴うものであり、投資家が期待した信頼のシグナルとは言い難いとの見方も示している。