政府は、省庁横断でまとめた初の「量子総合計画」を通じ、国家暗号体系に量子技術を段階的に導入する方針を打ち出した。量子鍵配送(QKD)と耐量子暗号(PQC)を軸に、来年初頭までにPQCアルゴリズムの標準化を終え、通信や国防など主要インフラで試行導入を広げる。
科学技術情報通信部が公表した「第1次量子科学技術および量子産業育成総合計画」には、国家暗号体系全般への量子技術適用に向けたロードマップを盛り込んだ。政府は国家レベルの「超安全情報網」の構築を目標に掲げている。
量子コンピュータは、従来のコンピュータが用いる「ビット」とは異なり、「量子ビット(キュービット)」を使って演算する。キュービットは量子力学の「重ね合わせ」によって複数の状態を同時に扱えるため、数が増えるほど演算能力が飛躍的に高まるとされる。
こうした量子技術は、とりわけセキュリティ分野での活用が見込まれている。主な柱は2つある。
1つはQKDだ。通信の過程で暗号鍵を安全に配送する技術で、量子力学の原理を利用し、理論上は盗聴や窃取を検知できるとされる。
もう1つがPQCである。量子コンピュータによる解読にも耐えられる暗号アルゴリズムを用いる方式で、量子時代の新たなセキュリティ基盤として注目されている。
量子コンピュータの性能向上に伴い、既存の暗号方式が破られるリスクは高まる。このため業界では、量子コンピュータを悪用した攻撃に備えるうえで、PQCへの移行は不可欠との見方が強い。
Ajou Universityの元サイバーセキュリティ学科教授、パク・チュンシク氏は「PQCは、セキュリティ水準を高めた新しい『南京錠』に当たる」としたうえで、「量子コンピュータの進展が加速するなか、PQC技術の開発と移行は必ず実現しなければならない」と強調した。
国際的には、米国立標準技術研究所(NIST)を中心にPQCの標準化が進んでいる。
政府は来年初頭にPQCアルゴリズムの標準化を完了し、通信、国防、金融、交通、宇宙インフラといった主要分野で試行導入を拡大する方針だ。科学技術情報通信部の関係者は「PQC移行を支援する専門コンサルティング企業を育成し、関連分野の専門人材の養成も加速する」と述べた。
業界では、政府主導のPQC移行を民間にも速やかに広げるべきだとの声が上がっている。公共部門で検証した導入事例を蓄積し、それを基に民間企業の導入を促す必要があるという。
もっとも、大規模なシステム更改に伴う費用負担や、既存のセキュリティ体系との互換性など、解決すべき課題はなお残る。
パク氏は「政府の計画が極端に遅いとは見ていない」としつつ、「量子コンピューティング技術の開発速度はさらに上がっているだけに、PQC技術の確保に加え、現場への普及時期もできる限り前倒しする必要がある」と述べた。
そのうえで「特に国会と予算当局の積極的な協力が必要で、後続措置も伴わなければならない」と指摘。「国内の情報保護企業への投資を拡大し、量子セキュリティのエコシステムを活性化することが、より現実的な戦略になる」と付け加えた。