EV(電気自動車)は走行距離が伸びるほどバッテリー劣化が深刻になるとの見方があるが、実走行データからは必ずしもそうした懸念は裏付けられていない。最新世代のEVでは、長距離走行後も性能低下は限定的で、実用上十分な航続距離を維持できることが分かった。InsideEVが1月29日(現地時間)に報じた。
EV向けテレマティクス分析を手がけるRecurrentが、世界各地の数千台を追跡したデータを分析したところ、15万マイル(約24万km)超を走行した車両でも、なお高い水準の航続距離を保っていることが確認された。
Recurrentは、同社が把握する約1000台を対象に、15万マイル以上走行した車両の実際の航続距離を調査した。比較にはEPAの推定値ではなく、新車時点の実航続距離を用いたという。
その結果、2012年式と比べて2023年式では、長距離走行後の航続距離維持率が約10ポイント改善した。Recurrentは、バッテリー化学の進歩に加え、熱管理システムや充電制御の改善が背景にあるとみている。
同社の分析によると、2012年式で15万マイル走行した車両の平均維持率は約81%だった。一方、2023年式では同じ条件でも初期容量の約91%を維持する見通しだ。EVバッテリーの耐久性が年々向上していることを示すデータといえる。
車種別の例では、新車時の航続距離が270マイル(約435km)だった2023年式のTesla Model 3は、15万マイル走行後でも満充電時に約247マイル(約398km)を走行できると分析された。これに対し、2015年式のNissan Leafは、新車時の実航続距離が約67マイル(約107.8km)にとどまり、同様の走行後には約56マイル(約90.1km)まで低下した。旧型車では劣化幅が比較的大きいうえ、初期容量そのものが小さいことも影響した。
バッテリー交換率も改善している。Recurrentによると、2022年以降に生産された第3世代EVでバッテリー交換が必要だった割合は0.3%にとどまった。2017~2021年生産の前世代モデルの2%を大きく下回る。2013年発売の第1世代Nissan LeafとVolkswagen e-Golfで交換率が8.5%だったのと比べても、大幅な改善だ。
Recurrentで市場インサイトを担当するリズ・ナズマン氏は、InsideEVの昨年のインタビューで「現在の新型EVは、少なくとも15年以上はバッテリーの大きな問題なく使えるとみている」と述べたうえで、「自動車メーカーはリチウムイオン電池を安定的に管理する手法をかなり確立してきた」と説明した。
もっとも、バッテリーに関する不具合の可能性が完全になくなったわけではない。ただ、その多くは製造上の欠陥に起因し、リコールや保証で対応されるケースが中心だという。さらに、この10年でバッテリー価格と交換費用は大きく下がっており、消費者負担も以前より軽くなっている。
今回のデータは、EVバッテリー寿命を巡る消費者の不安を和らげる材料になりそうだ。専門家は「床下に搭載された数千個のセルを過度に心配するより、通常通り使い続ければよいというのが、現時点で得られているデータの結論だ」と評価している。