債務調整の申請書。写真=聯合ニュース

金融当局が、債務負担の軽減を目的とした「脆弱債務者向け特別免責」の適用範囲を拡大する。生活保護受給者や重度障害者などを対象とする制度で、支援上限は従来の1500万ウォンから5000万ウォンに引き上げられる。再起支援の強化を評価する声がある一方、金融機関の損失負担やモラルハザードを懸念する見方も出ている。

金融委員会は1月29日、信用回復委員会が運営する「脆弱債務者特別免責」の対象金額を拡大すると発表した。この制度は、債務調整を受けた後に3年以上にわたり誠実に返済し、調整後債務の半分以上を返済した脆弱債務者について、残債を免除する仕組みだ。

背景には、現行制度の対象から外れる債務者への対応を求める声があった。金融委員会が昨年10月に開いた「庶民金融・債務調整」の現場懇談会では、債務額が基準をわずかに上回るだけで特別免責を受けられず、実際には返済が難しい債務者が支援の枠外に置かれているとの指摘が相次いでいた。今回の拡大は、こうした問題意識を踏まえた制度見直しといえる。

金融委員会のイ・オクチョル委員長も、公的機関の業務報告の場で、限界的状況にある脆弱債務者をより積極的に把握し、支援を強化する必要があると繰り返し訴えてきた。当局は今回の措置により、従来の制度では救済が及びにくかった層に実質的な再起の機会を提供できるとみている。

信用回復委員会のキム・ウンギョン委員長は、「高齢や障害などで経済活動に制約がある脆弱債務者の過度な返済負担を和らげ、日常生活への復帰と自立を後押しする社会的セーフティネットが一段と強化される」と説明した。信用回復委員会は債務調整に加え、就業支援との連携、所得保全、医療・住居支援、心理相談なども含めた総合支援を進める方針だ。

ただ、金融機関側は一様に歓迎しているわけではない。特別免責の対象債務が3倍超に広がることで、金融機関が負担する損失も増える可能性があるためだ。景気減速や延滞率の上昇が続く中、脆弱な借り手を巡るリスクがさらに膨らむことを懸念する声もある。

銀行関係者は「社会的セーフティネットとして必要な政策である点には共感する」とした上で、「免責範囲が急速に広がれば、銀行の健全性管理にかかる負担が重くなる可能性がある」と述べた。延滞債務者による債務調整申請の増加につながる可能性もあるとの見方も示した。

モラルハザードを巡る議論も続いている。一定期間、誠実に返済すれば相応の債務が消える仕組みが広く認識されれば、一部の債務者の返済意欲が弱まったり、意図的に債務調整を選ぶケースが増えたりするのではないか、という指摘だ。金融機関の一部では、債務免除策が繰り返されることで、将来的な減免を見込む意識が広がることを警戒している。

これに対し、信用回復委員会は、所得や資産の状況を精査するなど、厳格な審査手続きを適用する方針を示している。支援が必要な債務者に制度の恩恵が確実に届くよう管理するとともに、3年以上の誠実な返済実績と返済意思を確認し、制度本来の趣旨を徹底するとしている。

こうした懸念について、金融委員会のイ・オクチョル委員長は金融機関の業務報告の場で、「生活保護受給者や重度障害者など脆弱層に再起の機会を与える制度だ」と説明し、「モラルハザードとは切り離して見るべきだ」と述べた。

また、キム・ウンギョン委員長は「脆弱層は政府の社会保障制度を通じて各種サービスを受けているが、支援が適切に行われているか、過剰な供給になっていないかを丁寧に確認し、モラルハザードが生じないようにしたい」と話した。

一方で、政策効果を前向きに評価する声もある。脆弱層の再生可能性を高めることで、長期的には社会的コストの抑制につながるほか、事実上回収が難しい不良債権を整理することで、金融システムの効率性向上にも資するという見方だ。短期的な損失よりも、中長期的な安定効果の方が大きいとの考え方である。

今後の焦点は、支援拡大と金融安定のバランスをどう取るかにある。脆弱債務者保護という政策目標を実現しつつ、金融機関のリスクが過度に積み上がらないよう、きめ細かな管理体制を併せて運用すべきだとの指摘は強い。特別免責制度が社会的セーフティネットとして定着するのか、それとも金融機関の負担やモラルハザードを巡る論争をさらに広げるのかは、今後の制度運用にかかっている。

銀行関係者は「金融会社への影響については、当局も健全性に大きな影響が出ない範囲で合理的な水準に拡大したのだろう」と述べた上で、「どの制度でもそうだが、善意の受益者がいる一方で、モラルハザードを懸念する声は避けられない」と話した。

別の銀行関係者も、「対象はすでに債務調整手続きを経た脆弱層であり、短期的には銀行の延滞率や不良債権(NPL)比率といった健全性指標への影響は限定的だろう」と指摘した。その上で、「制度の実効性やモラルハザードの有無は、実際の運用結果を見ながら中長期で評価すべきだ。銀行としては、引当金の積み増しや事前のリスク管理体制を通じて、健全性への影響を綿密に管理していく必要がある」と述べた。

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