写真=聯合ニュース

政府・与党が、金融機関に過失がない場合でもボイスフィッシング被害の補償責任を課す「無過失補償」制度の法制化を進めている。補償原資の負担に加え、不正取引検知システム(FDS)の高度化投資も必要になる見通しで、銀行業界ではコスト増への警戒感が強まっている。

金融業界によると、共に民主党のボイスフィッシングTFと、政府横断のボイスフィッシングTFは先月30日に会合を開き、関連法整備を加速する方針を確認した。

会合では、政府が昨年8月28日に公表した「ボイスフィッシング根絶総合対策」の進捗状況と成果を点検するとともに、金融機関に無過失補償責任を課す制度の導入に向けて認識を共有したという。

与党・政府によると、今年1〜11月のボイスフィッシング発生件数は累計2万1588件と、前年同期比15.6%増加した。被害額も1兆1330億ウォン(約125億円)に達し、56.1%増えた。

こうした状況を受け、民主党ボイスフィッシングTF幹事のチョ・インチョル議員と、国会政務委員会の与党幹事を務めるカン・ジュンヒョン議員は、それぞれ関連特別法の改正案を代表発議した。ボイスフィッシング被害が個人では吸収しきれない社会的リスクに拡大しており、金融システムも一定の被害回復責任を負うべきだとの認識が背景にある。

カン・ジュンヒョン議員の法案は、金融機関による無過失補償の上限を最大5000万ウォン(約550万円)とし、被害者の口座を管理する金融機関と、詐欺に使われた口座の金融機関が補償額を折半する内容だ。

一方、チョ・インチョル議員案では補償上限を1000万ウォン以上の範囲で設定した。あわせて、金融機関にFDSの常時運用を義務付け、金融委員会が各社のボイスフィッシング対応体制の運用実態を評価する仕組みも盛り込んだ。評価が不十分な場合には、改善計画の提出を求めるとしている。

制度が導入されれば、銀行業界には新たなコスト負担が生じるとの見方が強い。被害補償だけでなく、FDSの高度化をはじめとする不正防止投資も避けられないためだ。

これに対し金融当局は、制度導入によって金融業界の予防努力が強まり、中長期的には被害規模の縮小につながるとみている。

与党・政府はこのほか、仮想資産取引所にもボイスフィッシング防止義務を課し、被害資金の返還を可能にする方向で制度改善を進める方針だ。最近のボイスフィッシング犯罪で、仮想資産が主要な資金奪取手段として使われている実態を踏まえた措置という。犯罪に悪用される、いわゆる「大砲口座」の根絶に向け、法人名義口座や外国人名義口座の管理も強化する。

会合では、ユン・チャンニョル政府横断TF団長(国務調整室長)が「今回の与党・政府TF協議の結果を踏まえ、関連法の下位法令を速やかに整備し、8・28対策も漏れなく補完して、新たな詐欺手口にもより強力に対応していく」と述べた。

こうした流れは、金融当局が消費者保護を最優先課題として打ち出している方針とも重なる。金融業界でも、消費者保護を中核価値に据え、組織改編や対応体制の整備を進める動きが広がっている。

年末の組織改編では、KB金融が持株会社の情報保護部を従来のIT部門からコンプライアンス監視人傘下へ移し、本部長級の専門人材を配置した。情報保護組織内には「サイバーセキュリティセンター」も新設した。KB国民銀行は、消費者保護グループ傘下に金融詐欺対応の専担組織を設けた。

新韓銀行は消費者保護部の役割と機能を拡充した。ハナ金融グループは、消費者保護グループ長の職位を常務から副頭取に引き上げ、責任と権限を強化した。

ウリィ銀行は、AIベースのスミッシング文面の安全性確認サービスを導入した。NH農協銀行は、消費者保護支援局を金融詐欺対応局に改編し、コンプライアンス監視人員も拡充した。

銀行業界関係者は「無過失補償制度は、消費者保護を強化するという方向性には賛同するが、費用負担や責任範囲については十分な議論が必要だ」と話した。

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