CASIOのデジタル腕時計「F-91W」向けに、オープンソースの交換用基板「Sensor Watch」が登場し、注目を集めている。既存の基板を入れ替えることで、故障した個体の修理に加え、温度表示やファームウェア更新などの機能拡張も可能にする。
F-91Wは、1989年の発売以来、デザインをほぼ変えずに生産が続くロングセラーモデルだ。写真を見ればすぐ分かるほど知名度が高く、低価格とシンプルな構造を武器に、世界的な人気を維持してきた。
オンラインメディアのGIGAZINEによると、F-91Wは必要最小限の機能に絞ったLCD表示、軽い装着感、長い電池寿命で知られる。公称の電池寿命は7年だが、実際には20年間動作し、誤差も7分に収まった事例があるという。
海外では、最新のG-SHOCKとは異なる魅力を持つ「CASIO VINTAGE」として再評価が進んでいる。複製品が多く出回る中でも、CASIOがオリジナルの生産を続けてきたことで、確固たる存在感を保ってきた。バラク・オバマ前米大統領とオサマ・ビン・ラディンがともに着用していた時計として知られることも、このモデルを語る上でよく挙げられる逸話の一つだ。
一方で、長年の使用により内部部品が寿命を迎え、動かなくなる個体も増えている。外観はそのままに内部機能を強化したいというガジェット愛好家の需要も根強い。Sensor Watchは、そうしたニーズに対応する交換用基板として開発された。設計はオープンソースで公開されている。
Sensor Watchは、ARM Cortex-M0+マイクロコントローラを採用する。アラーム対応のリアルタイムクロック用32kHzクオーツ、10桁セグメントLCD、割り込み対応の3ボタン、赤と緑のPWM調光LEDバックライトをサポートし、オプションで圧電ブザーも利用できる。
また、基板にはUSB Micro-Bコネクタを搭載し、UF2ブートローダーを通じたファームウェア更新にも対応する。
もっとも、基板交換には分解とはんだ付けを伴うため、メーカー保証は無効となり、防水性能が低下するおそれがある。作業はあくまで自己責任となる。
交換手順については、Sensor Watchの公式サイトで動画ガイドが公開されている。背面カバーを外し、ゴム製ガスケットとムーブメントを取り出した後、既存の基板と電池を分離し、ブザー用コネクタをはんだ付けして交換用基板に接続する。最後に逆の手順で組み戻せば動作するという。
工程の中では、ブザー用コネクタのはんだ付けが最も難しい作業とされる。
換装後のSensor Watchは、基本画面と補助画面の2系統で操作する。基本画面では時計やストップウォッチなど日常的な機能を使え、補助画面では温度表示、診断情報、詳細設定を確認できる。
操作にはF-91WのMODE、ALARM、LIGHTボタンをそのまま利用する。短押しと長押しを組み合わせることで、多様な機能を呼び出せるよう設計されている。
Sensor Watchは、単なる補修部品にとどまらない。数十年前のデジタル腕時計を、現代の実験用プラットフォームとして活用できるようにした点が特徴だ。F-91Wのクラシックな外観と象徴性を保ちながら内部を刷新できることから、ビンテージデジタルウォッチの愛好家やメイカーコミュニティの関心を集めている。