KTは30日、不正小額決済事故を受けた顧客向け補償策を公表した。違約金免除やデータ追加、ローミング割引などを盛り込んだ一方、通信料金の割引は見送った。補償プログラムの規模は4500億ウォンと試算しており、再発防止に向けて情報セキュリティ分野に今後5年で1兆ウォンを投資する方針も示した。
同社は同日、ソウル・光化門の社屋で記者説明会を開き、信頼回復に向けた顧客向け補償策と、情報セキュリティ刷新計画を発表した。
KTでは、違法なフェムトセルの悪用による不正小額決済事故で、加入者2万2227人分の加入者識別番号(IMSI)、端末識別番号(IMEI)、電話番号が流出した。金銭被害は368人、777件で、被害額は2億4300万ウォンだった。官民合同調査団はKTに過失があったと判断し、全利用者を対象とした違約金免除を求めていた。
KTは、12月31日から2026年1月13日までの間に移動通信サービスの解約を希望する顧客を対象に、違約金を免除する。9月1日から12月30日までにすでに解約した顧客にも遡って適用する。違約金免除は申請ベースで返金する方式とする。
一方で、9月1日以降に新規契約、機種変更、再契約をした顧客のほか、格安SIM、IoT、職権解約の利用者は対象外とした。
継続利用者向けには、2026年2月から6カ月間、毎月100GBのデータ追加、ローミング料金50%割引、OTT利用券、提携メンバーシップの割引などを提供する。あわせて、安全・安心保険も2年間付与する。
KTは、違約金免除分を除いた追加データやOTT利用券などの補償プログラムについて、規模を4500億ウォンと見積もった。
ただ、今回の補償策に通信料金の割引は含まれなかった。USIMハッキング事故に見舞われたSK telecomが、1カ月間の通信料金を50%割り引いたこともあり、料金割引を期待する声は少なくなかった。
クォン・ヒグンKTカスタマー部門マーケティング革新本部長は、「一時的な料金割引よりも、一定期間にわたって利用できるプログラムの方が望ましいと判断した。実利の高い特典を中心に構成した」と説明した。
同社は、SK telecomの事案とは情報流出の範囲が異なるため、補償の内容も違ってくるとしている。SK telecomのUSIMハッキング事故では流出した個人情報が約2696万件に上るとされるのに対し、KTの不正小額決済事故で情報が流出したのは2万2227人で、規模に大きな差があるという。
クォン本部長は「実質的に個人情報が流出したのは約2万2000人」としたうえで、「10月にはこの対象者に対し、料金割引に加えてモバイルデータの提供や違約金免除も実施した」と述べた。
もっとも、利用者にとって最も分かりやすい補償は通信料金の割引だとの見方は根強い。業界では、KTが業績への影響を懸念し、現金性の高い特典を避けたのではないかとの観測も出ている。
KT利用者のうち無制限プラン契約者は約30%とされる。移動通信の加入者数が約1350万人であることを踏まえると、400万人以上にとっては毎月100GBの追加データが実質的な恩恵にならない可能性がある。通信業界関係者は「損失の最小化を優先した、見劣りする補償内容に映る」とし、「責任をできるだけ小さく見せようとする姿勢と受け止められかねない」と話した。
メンバーシップ割引の詳細も現時点では明らかにしていない。KTは、提携先や具体的な割引内容について実施前に案内するとしている。ただ、違約金免除を受けるには2026年1月13日までに解約する必要があり、利用者がメンバーシップ特典の内容を確認する前に申請期限を迎える可能性もある。
同社は1月13日までに特典内容を公表する方針だが、「可能な限り」との条件を付けた。クォン本部長は「可能な限り免除期間が終わる前に具体的なメンバーシップ特典を案内し、顧客が判断できるようにしたい」と述べた。
KTは今回の事故を受け、情報保護ガバナンス全般も見直す。今後5年で1兆ウォンを投じ、ゼロトラスト体制の拡充、統合セキュリティ監視の高度化、アクセス権限管理の強化、暗号化の拡大などを段階的に進める。
全社横断の「情報セキュリティ刷新TF」も発足させた。前日には科学技術情報通信部が、情報セキュリティ業務を情報技術部門、ネットワーク部門、情報セキュリティ室に分散していた現行体制を改め、CISOを軸としたガバナンスに再編するよう求めていた。
パク・ミヌKT情報セキュリティ刷新TF長は、「全社の役職員60人超がTFに参加している」としたうえで、「従来の組織体制ではIT、ネットワーク、情報保護の各機能が分散し、抜本的なマスタープランを打ち出しにくいと判断してTFを構成した」と説明した。
キム・ヨンソプKT代表は「今回の件で顧客の皆さまにご心配をおかけしたことを、改めて深くおわびする」と述べた。そのうえで、「国家基幹通信事業者として、より安全で信頼される通信サービスの提供に向け、継続的に取り組む」とした。