NaverとKakaoが出資するスタートアップ計16社が、1月6〜9日に米ラスベガスで開催される「CES 2026」に出展する。6社はCESイノベーション賞を受賞しており、両社が育成してきた投資先の技術力が問われる場となる。出展企業の顔ぶれからは、NaverがAIやインフラなどの基盤技術を重視する一方、Kakaoはヘルスケアや物流など実用領域に軸足を置く構図も見えてきた。
業界関係者によると、出展するのはNaver D2SFの9社とKakao Venturesの7社。計16社のうち6社がCESイノベーション賞を受賞した。今回のCESは、韓国の大手テック企業が育成してきたスタートアップにとって、北米や欧州での提携拡大や事業化を加速する節目になりそうだ。
◆Naver D2SF、AI・インフラなど基盤技術を前面に
NaverのCVCであるNaver D2SFは、AIやインフラ領域を中心に9社を出展する。ヤン・サンファンNaver D2SFセンター長によると、ポートフォリオの8割超がすでにグローバル展開の準備段階にあるという。
受賞企業では、ロボティクスを活用した撮影自動化ソリューション「Gency PB」を展開するStudioLabが最高イノベーション賞を受賞した。GaudioLab(オーディオAI)、RebuilderAI(3D生成AI)、WearableAI(モビリティ)の3社は、それぞれ2部門でイノベーション賞を獲得した。
直近の投資先であるSaucerixの出展も注目される。Saucerixは、利用者の状況や文脈を理解する「アンビエントAI」を基盤にしたホームソリューションのスタートアップ。カメラ1台と独自の大規模言語モデル(LLM)を組み合わせたオンデバイスAIにより、プライバシー保護を図る。2027年1〜3月の北米投入を予定しており、今回のCESがグローバル市場での本格デビューとなる。
モビリティとデータインフラ分野では、Viewronがデータ収集から配信までを一体化したLiDAR AIプラットフォーム「VueX」を展示する。GenGenAIは、マルチセンサー向けの合成データ生成ソリューション「GenGenSense」を公開する。ヘルスケア分野では、Sevenpointoneが1分間の音声テストで脳の健康状態を測定する「Altswin」を出展し、北米市場の拡大を狙う。
Naverはこうした技術系スタートアップの北米進出支援も進めている。6月には「Naver Ventures」を正式に立ち上げ、12月にはシリコンバレーで韓国投資公社(KIC)と協力して現地ネットワークイベントを開催するなど、投資と事業化の連携を強めている。
◆Kakao Ventures、ヘルスケアや物流など実用領域を訴求
Kakao Venturesは7社を通じて、日常生活や産業現場の課題解決につながる実用型のイノベーションを打ち出す。展示の中心となるのは、睡眠、育児、物流、製造といった具体的な用途に直結するソリューションだ。
注目分野の1つがデジタルヘルスケアだ。イノベーション賞を受賞したNeuroTXは、電子薬プラットフォーム「WillSleep」を公開する。AIで利用者の睡眠状態を分析し、首周辺の迷走神経を刺激して副作用なく入眠を促す技術としている。2027年1〜3月の発売を予定しており、薬物依存度が高い北米の睡眠市場における代替手段として注目を集めている。PortRayは空間トランスクリプトーム技術を活用し、がん細胞の位置を精密に予測する創薬ソリューションを披露し、グローバル製薬企業との提携を探る。
XRとコンテンツ分野では、技術標準の獲得を狙う企業が並ぶ。Retinalは独自の「ピンミラー」技術を採用したARグラス向け光学モジュールを展示する。従来のARグラスが抱えてきたサイズと画質の課題を同時に改善し、一般的な眼鏡に近い装着感を実現した点が特徴だ。Recon Labsは3Dコンテンツ制作AIソリューション「Genpresso」を通じ、テキストや画像を3Dモデルに自動変換する技術を実演し、クリエイターの制作効率向上を訴求する。
産業現場向けのB2B AIソリューションもそろえる。Omeletは生成AIを活用した物流最適化ソリューション「Oasis」を紹介し、複雑な意思決定を自動化することで物流・配送効率の最大化を目指す。ConfortLabは、ノーコード型の製造AXプラットフォーム「Pota」を出展し、専任開発者を置けない中小工場でもデジタル転換を進めやすい点を打ち出す。育児プラットフォーム「WeNeed」を運営するLumenLabも、AIを活用した子どもの成長記録・発達情報サービスを紹介し、北米エドテック市場の開拓を狙う。
◆Naverは基盤技術、Kakaoは応用サービスに重点
CES 2026の出展企業を見ると、両社のスタートアップ投資の方向性は親会社の成長戦略と重なる。
Naver D2SFは、ViewronのLiDARプラットフォーム、GenGenAIの合成データ、GaudioLabのオーディオ技術、SaucerixのアンビエントAIなど、技術そのものの高度化が競争力につながる分野への投資が目立つ。検索やAIプラットフォームといった基盤技術を重視してきたNaverの戦略と整合的だ。
一方のKakao Venturesは、NeuroTXの睡眠向け電子薬、Omeletの物流最適化、RetinalのAR向け光学モジュール、Recon Labsのコンテンツ制作ソリューションなど、生活や産業の現場に近い応用領域の企業が中心となっている。メッセンジャーを起点に生活密着型サービスを広げてきたKakaoの事業姿勢が、投資先の構成にも反映された格好だ。
今回のCESは、異なるアプローチで育成された韓国スタートアップが、グローバル市場で技術力と事業性の双方をどこまで示せるかを占う舞台になる。
業界関係者は「NaverとKakaoが投資先を大規模にCESへ送り出すのは、単なる展示ではなく、グローバルパートナーシップの拡大と現地での資金調達を見据えた本格展開のシグナルだ」と話す。そのうえで「とくにイノベーション賞を受賞した企業は技術検証が進んでおり、今後1〜2年でグローバル市場で目に見える成果を上げる可能性が高い」との見方を示した。