2025年は世界のテック業界で構造変化が加速した(写真=Reve AI)

2025年の世界テック業界は、AI、モビリティ、暗号資産の3分野で構造変化が一段と進んだ。AIではモデル開発競争が激しさを増し、AIエージェントの業務導入が本格化。モビリティではEV市場の減速とロボタクシー商用化が並行し、暗号資産では価格上昇と規制整備が同時に進んだ。中国発の低コストLLM、米国のEV補助金終了、現物ETF承認といった出来事が、各市場の流れを大きく変えた。

以下、2025年を通じて注目を集めた動きを分野別に振り返る。

【AI】中国発の低コストLLMが台頭、OpenAIとGoogleの競争も加速

2025年のAI業界は、中国発の低コスト・高性能LLMの登場、OpenAIとGoogleによる主導権争い、企業でのAIエージェント導入拡大が重なり、大きく動いた。競争の軸はモデル性能そのものだけでなく、インフラ投資や実運用での活用力にも広がった。

その象徴が、中国のDeepseekだ。Deepseekは1月、自社AIモデル「Deepseek-R1」を正式発表し、高いコスト効率と競争力で注目を集めた。下半期にはV3系モデルをベースとした後継版も投入し、製品群を拡充した。

低コストかつ高性能という打ち出しは、従来の超大規模モデル開発の採算性を見直すきっかけとなった。これを受け、中国ではAlibaba、Baidu、Tencentなど大手テック企業も相次いでモデルの高度化や高性能版の投入を表明。スタートアップと大手が並行して技術革新とコスト競争を進める構図が鮮明になった。

生成AI市場では、OpenAIとGoogleの2強構図も改めて浮き彫りになった。OpenAIは8月に次世代の中核モデル「GPT-5」を公開し、11月に「GPT-5.1」、12月に「GPT-5.2」を投入。製品更新を重ねて主導権維持を図った。

これに対しGoogleは、マルチモーダル対応と推論性能を前面に打ち出した「Gemini 3」で対抗した。年間を通じて次世代モデルを巡る競争が続き、市場では大手各社の開発競争が一段と激化したとの見方が広がった。

もう1つの重要テーマがAIエージェントの本格導入だ。2025年は、AIが単なる補助ツールにとどまらず、メール処理、コード生成、データ分析、顧客対応といった業務を自律的に担う方向へ進んだ年となった。OpenAI、Google、Microsoftなどは、反復的な知識労働への適用を広げ、生産性向上につなげた。

OpenAIは1月、日程管理や予約などを利用者に代わって実行するAIエージェント「オペレーター」を投入した。2月には、複数のオンライン情報を統合し、リサーチアナリスト水準のレポートを作成する「ディープリサーチ」を提供。7月には、複雑な作業を一連の流れで処理する「ChatGPTエージェント」も披露した。

Microsoftも11月、WindowsとOfficeのエコシステムにAIエージェントを組み込み、企業業務全般へ活用範囲を広げる構想を示した。特にSaaS市場では、AIが人の細かな指示を待たずに業務を進める仕組みが広がりつつある。業界では2025年を、AIが企業組織の実務に本格的に組み込まれ始めた節目の年と位置付けている。

【モビリティ】米EV補助金終了で減速、自動運転は商用化競争へ

2025年のモビリティ業界は、EV中心だった成長シナリオの見直しが進んだ1年だった。各国の政策変更と完成車メーカーの戦略修正が重なり、市場全体がペース調整局面に入った。

最も大きな変化の1つが、米国のEV税額控除の終了だ。最大7500ドル(約113万円)の税額控除は9月30日で打ち切られ、加えてバッテリー原産地や重要鉱物に関する要件も厳格化されたことで、多くのEVが対象外となった。消費者の実質負担は増し、EV販売の鈍化や在庫の積み上がりにつながった。

この影響は、完成車メーカーの価格戦略や生産計画にも及んだ。EV需要の伸びが一服するなか、各社はハイブリッド戦略を再強化。Toyotaをはじめ、Hyundai Motor、Volkswagenなどがハイブリッド車やプラグインハイブリッド車(PHEV)の拡充を打ち出し、内燃機関車からEVへの移行期を見据えた対応を進めた。2025年は、EVシフトの速度を見直す年だったとの評価が出ている。

自動運転分野では、競争の舞台が技術開発から商用サービスへ移った。Teslaは6月、米テキサス州オースティンでModel Yベースのロボタクシーを投入し、限定されたジオフェンス内で有料の試験サービスを始めた。

当初は助手席に安全要員が同乗していたが、12月にはTesla車が運転席だけでなく助手席にも人がいない状態で公道を走行する映像が相次いで公開された。

一方、Waymoは安全要員を乗せない無人ロボタクシーサービスを米主要都市に拡大し、有料運行の実績で先行する立場を維持した。業界では、Teslaの量産・拡張余地とWaymoの運用安定性がそれぞれ強みとみられており、ロボタクシー競争は収益化を見据えたサービス段階に入ったと受け止められている。

中国EVメーカーの攻勢も強まった。BYDを中心に、価格競争力を武器として欧州や新興国でシェアを拡大。これに対し、米国と欧州連合(EU)は関税引き上げや規制強化で対抗した。2025年は、EV競争が技術や製品だけでなく、産業保護、サプライチェーン、安全保障を含む政策領域へ広がった年でもあった。

【暗号資産】価格上昇と規制整備が並行、機関投資マネー流入も

2025年の暗号資産市場は、価格上昇、技術進化、規制整備が同時に進んだ。機関投資家の資金流入、主要ネットワークのアップグレード、米欧を中心とした制度整備の進展により、市場の性格そのものが変わり始めたとの見方が広がった。

最大の変化として挙げられるのが、機関投資マネーの本格流入だ。米国でBTCとETHの現物ETFが承認され、資金流入が加速。これを追い風に、両資産はそろって史上最高値を更新した。

ビットコインは、現物ETFを通じた機関資金の流入とマクロ環境の改善を背景に、10月初旬に12万6000ドル(約1890万円)まで上昇した。

イーサリアムは技術面の進展が相場を支えた。5月の「Pectra」アップグレードで投資家心理が改善し、8月にはオンチェーン活動と取引量が過去最高水準を記録。価格は初めて4900ドル(約73万5000円)に達した。12月には2回目の大規模アップデート「Fusaka」が実施され、手数料の引き下げとトランザクション処理速度の改善が進んだ。

もっとも、年末にかけて上昇基調は鈍化した。特にビットコインは10月以降、利益確定売りや市場清算の影響で調整色を強め、史上最高値から40%超低い水準で取引される場面もあった。年末高への期待はいったん後退したが、市場では強気相場の終わりではなく、次の局面に向けた一時的な調整との見方も出ている。

規制面では、Rippleを巡る法的不確実性の後退も市場の注目を集めた。8月、米証券取引委員会(SEC)とRippleは、第2巡回区控訴裁判所に提起していた相互控訴を取り下げることで合意し、約4年にわたる訴訟は事実上終結した。XRPを巡る法的リスクは大きく後退した。

さらに、BTC、ETHに続いてXRPの現物ETFも米当局の承認を得た。市場では、これをXRP単独の材料ではなく、アルトコイン全体の規制明確化が進むシグナルと受け止める見方が多い。これを機に、Solana(SOL)など主要アルトコインの現物ETF申請が続く可能性も取り沙汰されている。

世界各地で規制整備も進んだ。米国では「GENIUS Act」「CLARITY Act」など主要法案の議論が進み、連邦レベルでの制度設計が加速した。SECと米商品先物取引委員会(CFTC)の管轄整理も具体化しつつある。

EUは2025年を起点にMiCA(Markets in Crypto-Assets)規制を本格施行し、取引所、カストディ事業者、ステーブルコイン発行体を対象とする統合的な規制枠組みを整えた。日本は暗号資産の金融商品としての再分類や、未公表情報を用いたインサイダー取引規制案の推進を通じ、既存金融システムへの組み込みを進めた。アラブ首長国連邦(UAE)も規制親和的な政策を掲げ、暗号資産ハブとしての戦略を強化した。

また、仮想資産利用者保護法の施行により、取引所の資産分別管理や不公正取引の監視体制の定着が進んだ。加えて、仮想資産の発行、流通、開示、上場までを含むエコシステム全体を対象とした第2段階立法の議論も始まり、制度の対象範囲を広げる動きが出ている。

ただし、各国で制度整備が進む一方、実際の執行や市場への定着にはなお時間がかかるとの指摘もある。米国とEUはいずれも法制度の枠組み整備を進めたが、詳細基準や監督手法は調整段階にあり、DeFiなど新領域では規制の空白も残る。

2025年はステーブルコインも規制議論の中心テーマに浮上した。CB Insightsのレポートは、2025年のステーブルコイン関連企業への投資が2024年比で10倍超に増えるとの見通しを示した。

供給量の拡大を背景に、Tether(USDT)やCircle(USDC)といった主要ステーブルコインを、既存金融と接続する決済・清算インフラとして活用する動きもみられた。一方で、準備金要件や発行・流通構造を巡る詳細ルールの整備など、課題はなお多い。

業界では2026年が、ステーブルコインが規制枠組みの中で実際の金融システムに定着できるかを見極める分岐点になるとみられている。暗号資産規制も今後は、制度設計そのものに加え、実効性のある執行と市場への定着が問われる段階に入る見通しだ。

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