写真=Appianのマット・カルキンズCEO

ビジネスプロセス自動化を手掛けるAppianのマット・カルキンズCEOは、AIが企業向けソフトウェア企業の価格競争力を大きく損なう可能性は低いとの見方を示した。根拠として挙げたのは、かつて価格破壊が懸念されたオープンソースソフトウェアの普及だ。

カルキンズCEOはThe Wall Street Journal(WSJ)に対し、AIがソフトウェア市場に及ぼす影響を見極める上で、オープンソースの歴史が参考になると説明した。1990年代にオープンソースが台頭した際には、ソフトウェア価格が崩れるとの懸念が広がったが、実際にはそうならなかったという。

同氏は「オープンソースは1990年代に台頭したが、ソフトウェア企業の価格決定力を揺るがすことはできなかった。25年後の現在、ソフトウェア産業の規模は当時の5倍になった」と語った。

その上で、AIが生成したコードについても、ソフトウェアの販売価格を押し下げるより、ソフトウェア企業の社内コスト削減に寄与する可能性が高いと指摘した。

カルキンズCEOは、企業向けソフトウェアではコードそのものよりも、周辺の価値が重要だと強調する。顧客が求めているのはコードだけではなく、テクニカルサポート、サービス、アップグレード、専門家コミュニティ、そして実績ある企業から導入する安心感だという。

同氏は「顧客は信頼できる結果に対して対価を払う。規制遵守や顧客関係のような領域では、100%の正確性に代わるものはない」と述べた。

さらに、Red Hatを例に挙げ、「自社で所有していないオープンソースのLinuxコードを基盤にしながら、大企業が必要とする支援、更新、サービスを提供することで、大手ソフトウェア企業を築いた」と説明した。その上で、ソフトウェア企業の競争優位はコードではなく、評判とコミュニティから生まれると付け加えた。

こうした点を踏まえると、オープンソースはかつてソフトウェア業界全体の価格決定力を脅かすとみられていたものの、結果的には企業向けソフトウェアにおいてコードが中核資産のすべてではないことを示した格好だ。カルキンズCEOは、AIについても同様の道筋をたどるとみている。

一方で同氏は、AIそのものの限界にも言及した。「AIは確率論的な技術で、内部では常に推測を行っている。これは大規模言語モデルの本質的な特性であり、ハルシネーション(幻覚)を起こして誤りを生む理由でもある」と指摘した。

そのため、多くのアプリケーションでは、AIの挙動を方向付けし、境界を定める決定論的なソフトウェア層が必要になるという。同氏は「多くのアプリケーションは完全な信頼性を必要とする。コードのコストは下がっているが、ミスのコストは下がっていない。AIは単独で完全に機能するには、なお信頼性が不足している」と述べた。

キーワード

#AI #生成AI #企業向けソフトウェア #Appian #オープンソース #Red Hat
Copyright © DigitalToday. All rights reserved. Unauthorized reproduction and redistribution are prohibited.