米国の401(k)市場で暗号資産の組み入れを巡る制度整備が進んでいる。写真=Shutterstock

米国の401(k)市場で、暗号資産を制度上の投資対象として組み入れる動きが現実味を帯びてきた。市場規模は約10兆ドルに上る。米労働省が2022年の警告指針を撤回したうえ、代替資産投資を巡るルール整備も進みつつあり、デジタル資産の位置付けが転換点を迎えている。CoinDeskが2月26日(現地時間)に報じた。

焦点となっているのは、規制当局の姿勢の変化だ。1974年制定の従業員退職所得保障法(ERISA)を所管する米労働省(DOL)は2022年3月、401(k)プランに暗号資産を組み入れることに強い警告を発していた。価格変動の大きさや受託者責任上の問題を理由に慎重姿勢を示し、関連商品を扱う事業者への調査の可能性にも言及していた。このため、資産運用会社や年金管理者にとっては法的リスクが意識され、市場参入の抑制要因となっていた。

しかしDOLは2025年5月28日、この指針を正式に撤回した。従来の解釈が、ERISAの柱である受託者の裁量原則と必ずしも整合していなかったためだ。さらに同年8月7日には、ドナルド・トランプ大統領が「401(k)投資家の代替資産へのアクセス拡大」に関する大統領令に署名した。これにより、暗号資産はプライベートエクイティや不動産と並ぶ代替資産の一角として位置付けられ、政策姿勢の転換が鮮明になった。

現在DOLは、代替資産投資に関する受託基準や管理手続きを具体化する新たな規則案をまとめており、米ホワイトハウスの行政管理予算局(OMB)が審査している。市場では、今後示されるガイドラインに、受託者責任の範囲、流動性管理の基準、ポートフォリオ内の配分上限、価格評価やカストディ体制の要件などが盛り込まれるとの見方が出ている。制度化を後押ししつつ、過度なリスクテイクを抑える枠組みになるとの見通しだ。

もっとも、規制面の障壁が低下したとしても、暗号資産が直ちに401(k)ポートフォリオに大規模に組み入れられるとは限らない。既存の投資信託中心の運用インフラとデジタル資産のカストディシステムをどう統合するかに加え、受託銀行のリスク評価や、投資助言会社、プランスポンサーによる承認手続きも必要になるためだ。とりわけERISAの下では受託者責任が厳格に問われるため、資産運用会社には十分な内部統制とリスク管理体制が求められる。

一方で、401(k)市場の特性が暗号資産に新たな安定性をもたらす可能性も指摘されている。退職年金は、短期的な資金流出入よりも、定期的かつ自動的な拠出を前提とした長期運用の仕組みだ。相場下落時にも自動リバランスや積立購入が機能しやすく、価格変動の緩衝材になり得る。こうした長期資金の流入が進めば、暗号資産市場のボラティリティが徐々に低下する可能性があるとの見方もある。

市場では、2026年を起点に一部の401(k)プランで暗号資産の選択肢が本格的に登場するとの観測が出ている。当初の組み入れ比率は限定的にとどまる可能性が高いが、制度面での信頼が積み上がれば、長期的には米国の退職年金システムの一部を担う資産になるとの見方もある。

暗号資産が投機的な資産にとどまらず、年金ポートフォリオを構成する資産として認知されれば、デジタル資産市場の性格そのものを変える節目になりそうだ。

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