ビットコイン(BTC)のデリバティブ市場が拡大するなか、「供給上限2100万枚は事実上意味を失った」との見方が出ている。これに対し、業界関係者からは、供給構造と価格形成を混同した議論だとの反論が上がっている。
Cointelegraphが24日(現地時間)、こうした論争を伝えた。発端となったのは、X(旧Twitter)で500万回超表示された分析だ。そこでは、ビットコインのデリバティブや現金決済の先物、ETFなどの金融商品の普及によって、固定された供給に基づく希少性が損なわれると主張している。
「The Kendall Report」の著者ロバート・ケンダルは、こうした商品の登場によって、ビットコインの希少性は理論上「無限供給」と大差ない状態になったと論じた。
一方、デジタル資産業界では、デリバティブが短期的な需給や価格変動に影響を及ぼすことはあっても、ブロックチェーン上の供給量そのものを変えることはできないとの見方が大勢だ。
Twinstakeのバイスプレジデント、ヘリオット・ブラウニングは、「機関投資家がETFやデジタル資産国庫(DAT)を通じてビットコインに投資しても、新たなコインが発行されるわけではない」と説明。「2100万枚の上限は依然として有効だ」としたうえで、最近の資金流入は短期売買よりも長期保有志向を強めているとの見方を示した。
CoinSharesのシニアリサーチャー、ルーク・ノーランも、金市場を引き合いに同様の見解を示した。「金には先物やETF、未割当口座など巨大なペーパー市場があるが、地下の金埋蔵量は変わらない。ビットコインにも同じ論理が当てはまる」と述べた。
ビットコインはコード上、供給上限が2100万枚に設定されている。新規コインは約10分ごとにマイニング報酬として生み出され、報酬は4年ごとに半減する「半減期」の仕組みに従う。
2026年2月時点では、約1999万BTCがすでに採掘されたと推定されている。一方で、パスワードの紛失や所有者の死亡などを理由に、最大400万枚が恒久的に失われた可能性も指摘されており、実際に流通可能な数量はそれより少ない可能性がある。
今回の論点は、供給そのものよりも、価格発見(プライスディスカバリー)の仕組みの変化にあるとの分析も出ている。ここ数年は、デリバティブの取引高が現物取引高を上回る場面が目立つ。2023年末には、CME Groupのビットコイン先物が未決済建玉ベースで首位に立ち、その後も主要取引所の間で順位争いが続いた。
ブラウニングは、デリバティブやETFが現物価格に波及する経路として3点を挙げた。まず、先物市場で形成された価格と現物価格に乖離が生じると、裁定取引によって現物需要が発生する。次に、銀行がビットコイン連動商品を販売する際、ETFを通じて現物のビットコインを購入してヘッジすれば、これも現物需要につながる。さらに、無期限先物市場のファンディングレートの変化が裁定取引を促し、現物の買いまたは売りを誘発する可能性があるという。
暗号資産リースプラットフォームBitLeaseの創業者、ニマ・ベニも、「デリバティブは、投資家がビットコインを直接保有せずにエクスポージャーを得る手段にすぎず、供給上限そのものを変えるものではない」と述べた。
ケンダル自身も、自らの主張は「ブロックチェーン上の希少性が消える」という意味ではないと釈明している。そのうえで、「デリバティブによって限界価格の決まり方が変わる点を指摘したかった」と説明した。
要するに、ビットコインの2100万枚という上限が技術的に変わらない点については、双方の認識は一致している。争点は、ETFや先物、仕組み商品が広がるなかで、価格形成の経路と主導権が、伝統金融と結びついたデリバティブ市場へ移りつつあるかどうかだ。供給が固定されていても、価値評価が形作られる仕組みは大きく変わりつつある。