Solidigmが展開する122.88TBのエンタープライズSSD「D5-P5336」の価格が、正式発売から9カ月で約3倍に上昇し、市場で注目を集めている。超大容量NANDの供給制約に加え、エンタープライズ向け製品特有の価格決定構造が背景にあるとみられる。
TechRadarによると、同製品は2024年11月に初公開され、2025年5月に正式発売された。当初の想定価格は約1万4000ドル(約210万円)だったが、実際の発売価格は1万2399ドル(約186万円)で、市場予想を下回った。発売時点のTB当たり価格は約101ドル(約1万5000円)で、超大容量モデルとしては妥当な水準と受け止められていた。
足元では、同一製品の販売価格は3万7128ドル(約557万円)に達している。発売から9カ月で約3倍に跳ね上がった計算だ。100台超の一括発注でも、1台当たりの値引きは約853ドル(約13万円)にとどまるという。
D5-P5336は、PCIe 4.0 x4接続の2.5インチU.2 SSD。サーバー、ストレージアレイ、クラウド、データセンター向けを想定した製品で、厚さ15mm、重量約166.5gの筐体に122.88TBを収める。
シーケンシャル性能は最大で読み出し6.84GB/秒、書き込み2.93GB/秒。4Kランダム性能は読み出し90万IOPS、書き込み1万9000IOPSで、リード中心のワークロードに最適化した。耐久性は0.6DWPDで、総書き込み容量は13万7523.20TBとしている。
平均故障間隔(MTBF)は228.2年とされるが、これは統計上の推定値だ。保証期間は5年。U.2フォームファクターは主にエンタープライズサーバーでの利用を想定する。
価格急騰の背景には、超大容量NANDの供給が限られていることがある。こうした大容量フラッシュは主力帯の製品ほど量産されておらず、ハイパースケールデータセンターの大口需要が入ると、需給が一気に引き締まる可能性がある。
加えて、エンタープライズSSDはコンシューマー向け製品と異なり、相対契約で価格が決まるケースが多い。公開されている小売価格は、在庫状況や販売チャネル側の調整によって大きく変動しやすい。
現行価格ベースのTB当たりコストは約302ドル(約4万5000円)。高容量のコンシューマー向けNVMe SSDの一般的な水準とされるTB当たり40〜80ドルを大きく上回る。7.68TB〜30.72TB級のエンタープライズSSDでも、大量購入時にはTB当たり150ドル(約2万2500円)以下で取引される例があり、それと比べても2倍超の水準になる。
もっとも、容量単価だけでは測れない利点もある。122.88TBを単一の2.5インチU.2スロットに収められるため、ラック当たりのドライブ本数やポート数、ケーブル、消費電力を抑えやすい。設置スペースや電力に制約のあるデータセンターでは、こうした高密度実装が運用面のメリットにつながる。
それでも、TB当たり101ドルから302ドルへの上昇は、導入判断に重い負担となる。D5-P5336の事例は、超大容量エンタープライズストレージ市場が、供給制約や契約構造、需要の偏在によって急激に価格変動し得ることを示すケースといえそうだ。