Yanoljaの技術研究開発子会社Yanolja Nextは2月24日、ソウル市江南区のMDMタワーでデモイベントを開き、旅行業界向けのAIソリューション3製品を発表した。音声で予約確認を行うAIエージェント「Tella」、宿泊施設向け画像生成AI「Vicker AI」、旅行・宿泊分野に特化した翻訳LLM「EEVE ROSETTA」で、早ければ年内、遅くとも来年初めにもグループ外企業への提供を検討する。
Yanolja Nextは2025年1月、Yanoljaグループのエンタープライズソリューションとコンシューマープラットフォームに共通技術を提供する目的で設立された独立法人だ。社員の9割超をエンジニアが占める。
チャン・ジョンシク代表は「この1年は技術スタックを積み上げ、社内検証を進める期間だった」と述べたうえで、「AIはあくまで手段であり、旅行産業の課題を技術で解決することが重要だ」と強調した。今年は実装範囲の拡大に注力し、外部展開も本格的に検討する考えを示した。
この日、特に注目を集めたのがVicker AIだ。宿泊施設の写真を1枚アップロードすると、AIが空間構造を分析し、春夏秋冬や昼、夕景、夜景といった季節・時間帯の異なる画像を自動生成する。
単なるフィルター処理やスタイル変換ではなく、建物の構造や室内の導線は維持したまま、空や樹木、照明など周辺環境の要素だけを変える仕組みを採用した。静止画をタイムラプス動画に変換する機能も備える。
Yanolja NextのIABプラットフォーム ソリューションリーダー、ハン・グギン氏は「夏に撮影した写真で冬の旅行需要に対応しなければならないような、撮影時期と利用時期のずれは宿泊プラットフォームの長年の課題だった」と説明。「撮影枚数を増やすのではなく、1枚の写真を拡張する方向で開発を進めた」と語った。
同社によると、ペンションの写真撮影には夏場だけでも300万~400万ウォンかかる。四季や時間帯ごとに撮影すれば、費用は数千万ウォン規模に膨らみ、事業者の負担が大きいことが開発の着想になったという。
Vicker AIは2025年第3四半期、NOLプラットフォームに掲載するペンション約80施設を対象にベータ導入を終えた。2026年中には適用施設をさらに広げる予定だ。ハン氏は、事業者募集の告知を3日間予定していたものの、開始から1時間で締め切るほど反響が大きかったと説明した。
Vicker AIはYanolja NextとGoogle Cloudが技術協力プログラムを通じて画像パイプラインを共同開発した。チャン代表は「1枚の画像を生成するために、数十のモデルを段階的につなぐ構造になっている」と説明。アップスケーリング、ダウンスケーリング、画像拡張、トーンの標準化など複数の前処理を経ることで、大量処理時のハルシネーションを抑えているとした。
同社はVicker AIの派生機能として「ルームツアー」も開発中だ。複数の客室写真をAIが分析し、空間の導線を再構成することで、利用者が写真を順に見るのではなく、実際に空間内を移動するように体験できるようにする。正式導入には至っていないが、会場では試作版のデモも披露した。
Tellaは、旅行会社とホテルの間で発生する予約確認の電話対応をAI音声エージェントが代行し、通話内容をリアルタイムでシステムに反映するソリューションだ。イベントでは、英語で電話をかけると、相手側の韓国語での応対を即時に認識し、会話を継続できる多言語リアルタイム変換機能を実演した。
現在はYanoljaグループのYanolja Go Global(YGG)傘下にあるStubaのインド運営チームに導入され、約37カ国のホテルを対象に運用している。チャン代表は「アジアのホテルでは、AIによる対応だと伝えても抵抗が比較的少ない一方、欧州の一部ではAIと聞いた瞬間に電話を切られる場合もある」と述べ、地域や言語、文化に応じたカスタマイズを進めていると説明した。
Tellaの開発を担当したYanolja Next IABプラットフォーム リーダーのチョン・ウジン氏は、ホテル側の運用方針による拒否要因を除けば、応答精度は97%以上だと説明した。その一方で、「実運用での自動化率は、想定外の人の応答によって変動しうるため、シナリオを継続的に拡充している」と述べた。今後は予約確認にとどまらず、緊急時に担当者へ自動発信する「On-Call」機能への拡張も計画している。
EEVE ROSETTAは、32言語に対応した旅行・宿泊分野特化の翻訳大規模言語モデルだ。JSONやXMLなどのデータ構造を維持したまま翻訳できるのが特徴で、Hugging Faceでオープンソースとして公開している。
同社によると、翻訳精度を示すBLEUでは27Bモデルが比較対象を上回る17.64を記録し、文の流暢性を示すChrFも37.21で首位だった。7Bの軽量モデルも同クラスでBLEU、ChrFの両指標でトップだったとしている。
現在は、NOLプラットフォームにおける国内宿泊施設の海外向け配信用コンテンツの翻訳や、海外から調達したホテル情報の翻訳に活用している。担当リーダーは「自社モデルを保有することで外部APIへの依存を下げ、年間で数億ウォン規模のコスト削減につながっている」と説明。「軽量モデルでも大規模モデル並みの性能を維持しており、インターネットが使えない環境や、高いセキュリティが求められる企業でも活用できる水準だ」と述べた。
Yanolja Nextが目指すのは、個別ソリューションの販売ではなく、旅行産業全体を支える技術プラットフォームの構築だ。チャン代表は「PMS(宿泊管理システム)からホールセラー、OTA(オンライン旅行会社)まで、旅行のバリューチェーンに必要な技術スタックをそろえ、省人化を実現する自動化プラットフォームサービスの提供が最終目標だ」と語った。
現時点で主な供給先はグループ会社だが、同社は早ければ年内、遅くとも来年初めからグループ外企業への提供も検討する。収益化モデルとしては、SaaS型サブスクリプション、API利用課金、取引連動型などを想定しており、一部サービスではパイロット導入を通じて有料化の可能性を段階的に検証している。
別法人として運営しているのは、短期的な売り上げの確保ではなく、中長期の技術競争力を高めるとともに、独立したR&D環境を整備する狙いがあるとしている。