フィンランドのスタートアップ、Donut Labは、同社の全固体電池に関する初の独立試験結果を公表した。試験を担ったフィンランドの研究機関VTT技術研究センターの報告書は、急速充電性能の一端を示した一方で、高出力充電時の熱管理が商用化に向けた課題であることも浮き彫りにした。
電気自動車専門メディア「Electric」が23日付で伝えたVTT報告書(VTT-CR-00092-26)によると、Donut Labの26Ah単セルは11C(286A)で充電した場合、0%から80%まで4分30秒で到達した。充電方式は最大4.3Vの定電流・定電圧(CC-CV)方式。試験では充電の前後に1Cで2.7Vまで放電し、容量も確認した。
一方、発熱は顕著だった。ヒートシンクを2枚使った11C充電では、セル表面温度は26.5度から63度まで上昇した。5C充電でも、ヒートシンク1枚では61.5度、2枚では47度に達した。
とくに熱管理の難しさが表れたのが、ヒートシンクを1枚だけ用いた11C試験だ。セル表面温度が安全上限として設定した90度に達したため、試験は一時中断された。約4分間の冷却後、ヒートシンクの接触状態を改善して試験を再開したという。
この結果は、Donut Labがこれまで掲げてきた「能動冷却は不要」との説明に対し、極端な高出力充電環境では一定の熱設計が不可欠である可能性を示す内容となった。
また、今回の報告書は充電速度の検証が中心で、同社が打ち出してきた他の主要仕様はなお独立検証を経ていない。業界内で議論を呼んだ400Wh/kgのエネルギー密度、10万回の充放電寿命、マイナス30度で容量99%維持、100度超での安定性、リチウムイオン電池と同等のコストといった主張は、現時点では裏付けが示されていない。
Donut Labは今年1月のCESで同電池を公開したが、ライブデモや特許開示を伴わない発表だったことから、業界では懐疑的な見方も出ていた。中国の電池メーカーSvolt Energyのヤン・ホンシン会長は、「すべてのパラメータが矛盾している」と指摘し、詐欺の可能性にまで言及した。
これに対し、Donut Labのマルコ・レッティマキCEOは、自身の評判を懸けて技術の正当性を訴え、数週間以内に追加のVTT報告書を公表する考えを示している。
業界では今回の結果を「意味のある第一歩」と評価する声がある一方、慎重な見方も根強い。11Cで4.5分充電という結果は確かに目を引くが、全固体電池の競争力はエネルギー密度や寿命、コスト構造を含めた総合性能で決まるとの見方が大勢だ。後続データで残る疑問を払拭できるかが焦点となる。
全固体電池を巡る開発競争も激しさを増している。中国のBYDとCATLは2027年前後の少量生産を目標に掲げ、トヨタは2030年の量産を計画する。Geelyも今年、初の全固体電池パックを披露する予定だ。
もっとも、現時点でDonut Labが掲げるすべての仕様を同時に満たす商用段階のセルを保有すると公言している企業はない。