Nvidiaが、ノートPC向けにCPU、GPU、NPUを統合したシステム・オン・チップ(SoC)市場に参入する見通しだ。米Wall Street Journal(WSJ)によると、DellやLenovoなどのPCメーカーが2026年に同社製チップを採用した製品を投入する可能性がある。薄型軽量化とバッテリー駆動時間の延長を前面に打ち出し、Windows PC市場の競争構図に影響を与える可能性がある。
Nvidia製チップを搭載するPCの投入時期や採用メーカーについて、同社の正式発表は出ていない。WSJは、Nvidiaのサプライチェーンに詳しい関係者の話として、DellやLenovoを含む複数のPCメーカーが同社と協業していると報じた。
WSJによれば、NvidiaはPC事業で当面大きな利益を見込んでいるわけではない。ただ、あらゆる機器にAIが組み込まれる時代をにらみ、個人向け市場での存在感を維持する狙いがあるという。AIやスマートフォンほどの成長期待はないものの、ノートPC市場はなお十分な事業規模を持つ分野と位置付けている。
Nvidiaとそのパートナー企業は、PCの薄型軽量化を進めながら、バッテリー駆動時間を伸ばすことに重点を置いている。
SoCはiPhoneをはじめとするスマートフォンでは一般的だが、PCではまだ主流ではない。焦点となるのは、Nvidiaが性能を損なわずに、スマートフォン並みの電力効率と長時間駆動をPCで実現できるかどうかだ。WSJは、こうした動きによって、MicrosoftのWindows搭載機がAppleの最新MacBookとより直接的に競合するようになるとの見方が出ていると伝えた。
PC向けチップを巡って、NvidiaはIntelや台湾の半導体設計企業MediaTekと連携を進めている。Intelとの協業は2025年に発表されており、IntelのCPUにNvidiaのグラフィックス技術とAI技術を組み合わせることが柱となっている。
MediaTekとの協力関係は、1月にNvidiaのジェンスン・フアンCEOが台湾を訪れた際、非公式に明らかになった。関係者によると、MediaTekのSoCはArmアーキテクチャを採用し、2026年上半期に投入される可能性がある。
NvidiaがSoCで狙う市場の一つは、高価格帯のハードウェアに支出意欲があり、同社ブランドへの親和性も高いゲーマー層だ。一方で、Intel系環境を前提に設計された高負荷ゲームや各種アプリケーションとの互換性確保が課題になるとWSJは指摘している。
NvidiaのCPU領域への拡大は、PC市場にとどまらない。データセンター向けCPU市場でも存在感を強める兆しが出ている。同社は最近、MetaとAIチップの長期供給契約を締結した。契約に基づき、MetaはNvidiaの現行世代および次世代のAIチップを大規模に導入し、データセンターを構築する計画だ。
注目されるのは、この契約にGPUだけでなくNvidiaのGrace CPUも含まれている点だ。Metaは、Grace CPUをGPUと切り離して単独で大規模導入する初の企業になった。
これまでデータセンター向けCPU市場はIntelとAMDが主導してきたが、NvidiaがCPU供給まで本格化させることで勢力図がどう変わるかが焦点となる。同社は次世代CPU「Vera」を単独製品として訴求し、AI推論におけるCPUの重要性を強調している。Moor Insights & Strategyのパトリック・ムーアヘッド氏は、「NvidiaはCPU市場でも独自の地位を強めつつある」と分析している。