次世代ディスプレイ技術として注目されるQDEL(量子ドット発光ダイオード)で、商用化に向けた開発競争が本格化している。2028年の初の製品投入を視野に世界のディスプレイ各社が開発を急ぐ中、最大の技術課題とされる青色発光の実現に向け、材料開発の動きも活発になってきた。
こうした中、量子ドット専業のポーランド企業QNA Technologyは、重金属を使わない青色量子ドットの開発を前面に打ち出している。韓国に事務所を開設し、EUビジネスハブ・プログラムを通じてSemicon Korea 2026の会期中に現地パートナーの開拓を進めるなど、韓国のディスプレイ業界との協業拡大を急ぐ。
同社のアルトゥル・ポドホロデツキCEOは20日のインタビューで、「青色量子ドット分野で、安定性と高効率、再現性を備えた光源を実現することが依然として最大の技術課題だ」と述べた。その上で、「これはQDELディスプレイを含む量子ドット関連技術の商用化における中核的なボトルネックだ」と説明した。
QDELは、量子ドット自体が電気によって発光する自発光方式で、従来のQD-OLEDとは異なる。OLEDに比べて色純度や輝度に優れ、インクジェット印刷プロセスを適用できれば製造コストの低減も見込めることから、次世代ディスプレイ技術として期待が高い。
BOEは今年初め、カドミウム系QDELについては2028年末、カドミウムを使わないソリューションについては2030年ごろの商用化を見込むとの見方を示した。業界では、まずノートPCなどの小型機器で採用が進み、その後、大型製品へ広がるとの見方が多い。
一方で、最大の壁となっているのが青色だ。赤色と緑色の量子ドットは一定水準の性能を確保しているが、青色はエネルギー準位が高く、寿命と効率の両立が難しい。とりわけ、カドミウムを使わずに商用化レベルの性能を実現することが、業界全体の課題として残っている。
QNA Technologyは、この課題に対して青色に特化する戦略を採る。競合各社が赤・緑・青のフルカラー開発を進めるのに対し、同社は青色光源に経営資源を集中している。
ポドホロデツキCEOは、「前駆体の選定から精製戦略に至るまで、すべての技術プロセスを自社で設計し、管理している」と語る。「重金属や希土類元素を使わないためRoHS規制に適合し、産業への実装に向けた検討も進めやすい」とした。
同社は現在、ディスプレイ向けの「PureBlue.dots(445~460nm)」と、バイオフォトニクス向けの「DeepBlue.dots(420~445nm)」の2製品群を展開している。PureBlue.dotsについては、広色域と目の安全性の両立を図るため、発光波長を最適化したとしている。
外部量子効率(EQE)は24%に達した。2025年に稼働したパイロット生産ラインを通じて、Gen 4.5ディスプレイライン向けに供給可能な量産体制を整えたという。
もっとも、QDELの商用化では素子寿命も大きな課題だ。寿命は量子ドットそのものの品質だけでなく、ETLやHTLといった隣接層の性能や適合性、素子構造全体、製造プロセスの各種パラメータにも左右される。
QNA Technologyは、ディスプレイ業界のパートナー企業や海外大学の研究グループと連携し、四半期ごとに性能改善を確認しているという。
ポドホロデツキCEOは、「重金属不使用の青色量子ドットは比較的新しいプラットフォームであり、現時点ではOLEDやカドミウム系量子ドットの水準には達していない」としつつも、「構造的な限界ではなく、時間の問題だ」と強調した。さらに、「耐久性の指標が実用段階に達すれば、QDELは既存ソリューションを上回る可能性がある」と述べた。
QNA Technologyは、年内に自社でQDELダイオードを試作することも目標に掲げる。ポドホロデツキCEOは、「自社製品と互換性のあるETL(電子輸送層)の開発プロジェクトを始めた」と明らかにした。
その狙いについて同氏は、「単なる材料供給にとどまらず、統合材料パッケージを提供することで、素子最適化のプロセスを簡素化したい」と説明する。
韓国市場での展開も段階的に広げる。ソウルに韓国事務所を設け、ソウル大学を含む韓国の研究機関との協力を拡大している。バイオフォトニクス分野では、中小企業や大学との協業も進めているという。
インク材料も同社の強みの1つだ。UV硬化型インク、インクジェットインク、フォトレジスト一体型量子ドットなど、複数の処方を開発している。
ポドホロデツキCEOは、「各処方は顧客ごとの印刷プロセス条件に合わせて設計している」と話す。「顧客が既存の製造インフラや工程能力を最大限活用できるよう最適化することが、当社の中核的な競争力だ」と述べた。
同氏は、韓国を「ディスプレイ技術と量子ドット分野で戦略的重要性の高いグローバルハブ」と位置付ける。「大規模な生産能力と厳格な品質基準を持つ韓国産業と、当社の重金属不使用の青色量子ドット技術が結びつけば、QDEL商用化の前倒しにつながる」と語った。