AIエージェントの運用コストが、米国労働者の平均年収を上回る可能性があるとの見方が浮上している。企業の導入が広がる一方で、想定以上のコスト負担が普及の壁になりかねないという指摘だ。
Cointelegraphが20日(現地時間)に報じたところによると、テック投資家のジェイソン・カラカニス氏は最近出演したポッドキャストで、AnthropicのClaudeベースのAIエージェント運用に1日当たり約300ドルを支出していると明らかにした。業務全体のうち担っているのは10〜20%程度にとどまるにもかかわらず負担が大きいとして、「トークン利用料が従業員の給与を上回るのはいつか」と疑問を呈した。トークンは、AIモデルの利用量に応じて課金される単位を指す。
Social CapitalのCEO、チャマス・パリハピティヤ氏も同様の問題意識を示した。AIモデルが従業員1人分の業務を代替するには、少なくとも2倍以上の生産性を証明できなければ採算が取れないと主張。企業はAI活用に関する明確な予算基準を整備すべきだと訴えた。
マーク・キューバン氏は、こうしたコスト構造が「AIが近く人間を代替する」との見方に対する有力な反論になると指摘した。トークン費用に加え、維持管理コストも含めると、ClaudeベースのAIエージェント8台で従業員1人分の業務を代替する場合、1日当たり1200ドル超が必要になり得ると説明した。実際のコストがさらに2倍に膨らむ可能性にも触れ、AIが人間より2倍以上生産的なのか、倫理面や定性的なリスクまで含めて見極める必要があると付け加えた。
こうした議論は、企業によるAI導入の拡大と一部職種の雇用縮小が重なるなかで注目を集めている。Microsoftが昨年7月に公表した研究では、知識集約型の職務やカスタマーサービス、営業分野がAIの影響を受けやすい可能性が高いとされた。
AIの現時点での実用性を巡っては、政策当局と業界の見方にも温度差がある。ホワイトハウスのAI・暗号資産担当官デービッド・サックス氏は以前、「AIは依然として利用者の指示と検証を必要としており、完全な事業価値の創出には限界がある」と指摘した。一方、McKinseyは、AIエージェントが全工程の自動化を目指し、人間の介在なしに稼働するモデルへ発展し得るとの見通しを示している。
一方で、暗号資産業界ではAIエージェントの中長期的な活用余地に注目が集まっている。ステーブルコイン発行企業CircleのCEO、ジェレミー・アレール氏は、今後5年で数十億のAIエージェントが日常決済にステーブルコインを活用するとの見方を示した。Binance共同創業者のチャンポン・ジャオ氏も、AIエージェントはブロックチェーン技術と自然に結び付くとし、暗号資産がAIの基軸通貨になる可能性に言及した。
AIエージェントが中長期的に業務環境を再編する可能性は大きい。ただ、足元では高い運用コストが、企業導入の成否を左右する最大の変数になりそうだ。